柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 僕を呼ぶ声が耳に届き、絞めつけていた喉元から反射的に手を放した。
 途端に、明日名は今にも倒れ伏しそうなほど激しく、何度も何度も嗚咽交じりの咳を繰り返す。その合間にも、ひゅうひゅうと風の鳴るような音を立てて喉を上下させていた。

 震える腕で、華奢な身体を抱き寄せる。僕の腕なんか振り払われてしまうに違いないと自嘲がよぎったけれど、明日名はそうしなかった。
 殺される寸前だったくせに。自分を殺そうとした相手を抱き締め返して、唇に触れて……一体、君はどこまで僕を甘やかせば気が済む。

 どうして許してしまうんだ。
 どうして受け入れてしまえるんだ。

『一緒がいいの。尊さんがそうしたいなら、それでもいいから、一緒に』

 敵いやしない。
 君は本当に、こんなにも愚かしく、美しい。
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