柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
     *


 明日名の体調が優れない日が続いている。
 元々任せていた家事や掃除を代わることも増えた。そのたび、明日名は申し訳なさそうに眉を下げ、謝罪を口にする。

 ……謝らなくていいのに。
 掃除なんて、そもそも最初から不要だ。本堂も部屋も外庭も廊下も縁側も、少しも汚れない。たとえ汚れたところで翌朝には元通り。掃除も炊事も、君をこの場所に縛るために思いついただけの適当な役割でしかない。

 まともな食事を作るのは、少々骨が折れた。
 これ以上はごまかせない。明日名は、その身に時間の流れを受け入れている。ならばきちんと食事を取る必要があるわけで、腹が減ったら適当に空腹を満たせばいい僕とは違う。
 あまりにつらそうで、昨晩はとても抱けなかった。憔悴した顔も、どこか思い詰めたような仕種も、明日名が見せる態度のなにもかもが不安を煽る。食事を作る時間以外は、彼女につきっきりの日が続いていた。

 昨晩ぐっすり眠れたからか、今日の彼女は朝から顔色が良かった。ほっとしたのも束の間、布団を出て早々に台所へ向かおうとする明日名を必死に宥め、せめて手伝わせてくれと一緒に(あさ)()の支度をした。
 このところ浮かない顔ばかりしていた明日名は、今日は気の抜けたような笑顔を何度も見せてくれた。つられて、僕も何度も笑った。

 一日の終わり。繰り返しの始まり。
 闇に染め上げられた夜、今日も明日名は僕の隣で眠る。

 数日ぶりにたくさん身体を動かしたからか、本人が思う以上に疲れていたらしい。布団に入って間もなく、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。
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