柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
明日名を抱くたび、孕めばいいと願っていた。
僕の子を宿してほしい、産んでほしいと。
この地にあっては不可能だからこそ、願いは余計に募った。それが、まさかこんな形で明日名を苦しめていたかもしれないなんて。
澪は、あの日僕を確かに救ってくれた。それと同じくらい、あるいはそれ以上に、僕は明日名に救われた。だというのに、彼女へ返してあげられるものが僕にはひとつもない。
それでも、この不毛な復讐を続けているわけにはいかなかった。
これが罰なのだろうか。自業自得という気もするが、そのせいで誰より苦しむのは明日名だ。それがこの上なくつらい。
こんな未来が訪れるのなら、なにひとつ選ばなければ良かった。
護が藍を攫ってくれればいいのにと何度も思ったが、違う。ふたりに対してなにかを願うのではなく、僕こそがこの地を去れば良かった。それで済む話だった。
けれど、もしそうしていたなら、僕と明日名が出会うことはなかったのかもしれない。
明日名と出会わなかったなら、僕も明日名も、ここまでの苦しみを味わう必要はなかった。だとしても、僕は明日名と出会えて良かったと、明日名と出会わずに終わる人生でなくて良かったと、心の底から思ってしまっている。
澪の子孫だからではない。君は僕の特別であり、すべてだ。
なにもかもを諦め、くだらない復讐を繰り返しては溜飲を下げてばかりだった僕を、その輪廻から断ち切ってくれた人。
「寄越して。あんたの絵馬」
『っ、誰がお前などに……!』
「もういい。終わりにしよう、護。あんただって疲れただろ」
そう囁いたとき、わずかにだけ覗いた。
優しかった護。謂れのない悪意や暴力から、身ひとつで僕を守ってくれた護。震えながらも背に僕をしっかりと庇ってくれたたったひとりの兄、その当時の面影が。
僕の子を宿してほしい、産んでほしいと。
この地にあっては不可能だからこそ、願いは余計に募った。それが、まさかこんな形で明日名を苦しめていたかもしれないなんて。
澪は、あの日僕を確かに救ってくれた。それと同じくらい、あるいはそれ以上に、僕は明日名に救われた。だというのに、彼女へ返してあげられるものが僕にはひとつもない。
それでも、この不毛な復讐を続けているわけにはいかなかった。
これが罰なのだろうか。自業自得という気もするが、そのせいで誰より苦しむのは明日名だ。それがこの上なくつらい。
こんな未来が訪れるのなら、なにひとつ選ばなければ良かった。
護が藍を攫ってくれればいいのにと何度も思ったが、違う。ふたりに対してなにかを願うのではなく、僕こそがこの地を去れば良かった。それで済む話だった。
けれど、もしそうしていたなら、僕と明日名が出会うことはなかったのかもしれない。
明日名と出会わなかったなら、僕も明日名も、ここまでの苦しみを味わう必要はなかった。だとしても、僕は明日名と出会えて良かったと、明日名と出会わずに終わる人生でなくて良かったと、心の底から思ってしまっている。
澪の子孫だからではない。君は僕の特別であり、すべてだ。
なにもかもを諦め、くだらない復讐を繰り返しては溜飲を下げてばかりだった僕を、その輪廻から断ち切ってくれた人。
「寄越して。あんたの絵馬」
『っ、誰がお前などに……!』
「もういい。終わりにしよう、護。あんただって疲れただろ」
そう囁いたとき、わずかにだけ覗いた。
優しかった護。謂れのない悪意や暴力から、身ひとつで僕を守ってくれた護。震えながらも背に僕をしっかりと庇ってくれたたったひとりの兄、その当時の面影が。