柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 書いてほしい。書かないでほしい。
 どちらも僕の醜い本音だ。だが。

 君には、自分の幸せのためにお腹の子を苦しめることなんてできないだろう。だから、僕はいつまでだって待とうと思う。

 親としての役割をともに果たせないのは苦しい。それに、明日名は天涯孤独の身だ。
 たったひとりで子を産み育てていくのは、この上なく心細く、苦しいことなのかもしれない。
 できるなら、明日名の隣で、明日名を支えながら、明日名に支えられながら、一緒に生きていきたい。けれど、今となってはそれは絶対に叶わない。だから。

 百二十年もの間、煩わしいしがらみに縛られてきた身だ。待つことは造作もない。
 それに、君を待つ時間なら、縛られ続けるばかりだった百二十年よりずっと幸せに違いない。

「明日名、ごめんね。でも僕は、いつまでだって、君を」

 ――待っているから。

 ぱきん。
 ひときわ高く乾いた音が響いたと同時、僕の意識はぶつりと音を立てて、白一色に塗り潰されてしまった。
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