柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
     *


 ふたり分の氏名を書き込んだ絵馬が祭祀者の手に渡った時点で、この世ならざる者たちの婚姻は成立する。
 死者と死者の名を刻む、あるいは生者と生者の名を刻む以外は禁忌である。
 それが、絵馬を扱い黄泉へと干渉する者たちの絶対的な掟だ。つまり、死者の名と生者の名をひとつの絵馬に刻むことは許されない。

 祭祀者としての薫陶(くんとう)を密やかに受けながら、私は、母から伝えられていた禁忌を心から信じて十八までの齢を生きた。だが。

 ここに記すのは、長い時間をかけて歪みを深めたある寺院が辿った末路である。

 歪みは容易に私たち双子を包み、正常に廻るべき歯車を狂わせた。狂ったものは歯車だけではない、兄の人生もまた大いに狂った。そして私の人生も――否、私自身も。
 その事実を、私は深い闇の淵に永劫閉じ込めておこうと思っていた。しかし、ある者に伝えられた言葉を耳に入れ、いささか気が変わった。

 私と兄、それぞれが犯した罪をここに記す。
 願わくは、まだ終わりの見えぬ決着の詳細までを記せますよう。
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