柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
炊事や掃除、裁縫などの家事は、どれを任されても苦ではない。
足腰が弱かった祖母を小学生の頃から手伝っていたし、祖母の死後、高校を卒業するまでお世話になった施設でも、それらには真面目に取り組んでいたからだ。
電気もガスも水道も通っていない山奥で、すでに三日も生活してしまっている。
数日前には想像さえ及ばなかった暮らしをしているのに、敷地内で迷子になるかもしれないという以外、特に不安を覚えない。そんな自分に一番驚いているのは、他ならぬ私自身だ。
たらいに張った水は、本堂の裏側にある井戸から汲み上げてもらったものだ。
井戸水を使って生活するなんて初めての体験だ。水はかなり冷たいけれど、湿気の多い季節だからか、体感的にはむしろ心地好い。
「……ふう」
使い終わった食器や調理器具を水に浸しながら、私はぼんやりと外を眺める。台所の窓からは、私が訪ねようとしていた絵馬の奉納場所の一部が覗いていた。正確には、その跡地が。
百年近く前に大きな火災があったというその場所に、今、絵馬はただの一枚も奉納されていない。お堂ごと跡地となったそこには、今では笹が生い茂り、傍目にはなんの変哲もない垣根があるだけだ。
降り続く雨に濡れた笹垣を一瞥した私は、再び小さく息をつき、洗い終えた食器の上に布巾を置いた。
足腰が弱かった祖母を小学生の頃から手伝っていたし、祖母の死後、高校を卒業するまでお世話になった施設でも、それらには真面目に取り組んでいたからだ。
電気もガスも水道も通っていない山奥で、すでに三日も生活してしまっている。
数日前には想像さえ及ばなかった暮らしをしているのに、敷地内で迷子になるかもしれないという以外、特に不安を覚えない。そんな自分に一番驚いているのは、他ならぬ私自身だ。
たらいに張った水は、本堂の裏側にある井戸から汲み上げてもらったものだ。
井戸水を使って生活するなんて初めての体験だ。水はかなり冷たいけれど、湿気の多い季節だからか、体感的にはむしろ心地好い。
「……ふう」
使い終わった食器や調理器具を水に浸しながら、私はぼんやりと外を眺める。台所の窓からは、私が訪ねようとしていた絵馬の奉納場所の一部が覗いていた。正確には、その跡地が。
百年近く前に大きな火災があったというその場所に、今、絵馬はただの一枚も奉納されていない。お堂ごと跡地となったそこには、今では笹が生い茂り、傍目にはなんの変哲もない垣根があるだけだ。
降り続く雨に濡れた笹垣を一瞥した私は、再び小さく息をつき、洗い終えた食器の上に布巾を置いた。