柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
     *


 途中から砂利道に姿を変えた道路は、とにかく歩きにくい。
 スニーカーを履いてきて良かった。サンダルやヒール靴では、多分まともに足を進められなかった。

 タクシーの利用も考えたけれど、商店のお婆さんから、車は砂利道の手前までしか入れないと教えてもらっている。
 どちらにしても頼まなくて正解だった。商店を出て五分も経たないうち、地図は車が侵入できそうにない細道を示していた。確かに、これではバスどころか車さえ走れないだろう。
 加えて、麓の観光スポットを中心に描かれた地図上では、その細道も途中で途切れている始末だ。お婆さんの心遣いはありがたかったけれど、地図はこれ以上役に立ちそうにない。

 緩やかな坂道に変わった砂利の上を、ひたすら歩く。

 運動不足の身体に、整備されていないこの道は堪えた。簡単に息が上がってしまう。ときおり足を止めて呼吸を整えつつ、ゆっくりと進んでいくしかなかった。
 だいぶ弱まってきたものの、雨はまだ降り続いているから、傘を閉じるわけにもいかない。片手に傘の柄、もう片手に商店で購入した食べ物や飲み物が詰まったビニール袋。不慣れな場所を歩いている緊張も相まってか、相当な重さに感じられてしまう。

 雨の中、でこぼこの砂利道――それも車一台通らない細道をたったひとりで歩き続けるのは、想像を超える重労働だ。
 今にも尽きそうな気力を振り絞り、私は先を目指すことに集中する。

「あ」

 どの程度歩いた頃か、眼前に古びた塚が現れた。
 商店のお婆さんから聞いていた目印だ。

 石碑は(つた)に覆われ、刻まれている文字がまったく見えない。
 ただ、形状はお婆さんが挙げた特徴と一致していた。先端だけ丸い、尖塔のような石碑。『蔦まみれだど思うんども』という嗄れ声が鮮明に蘇る。
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