柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
朝起きて、朝食の支度を手伝って、一緒に食べる。それから、お勤めのために本堂に向かう彼の袈裟姿を眺め、掃除や洗い物といった仕事を行い、入浴と夕飯の用意をする。そして夕飯を食べ、夜の挨拶をして布団に入る。
あとは、合間合間に、書庫へこもった住職さまを探し出しては声をかける……日々その繰り返しだ。
宛てがわれた個室は、私室として自由に使って良いと言われているけれど、実際には寝るときくらいしか足を運ばない。あとは、手洗いした服や下着を乾かすときぐらいだ。
そんな生活を数日繰り返しただけ。それでも、荒みきっていた私の心はだいぶ落ち着きを取り戻せている。
もしかしたら自分は、疲れていたのではなく傷ついていたのかもしれない。そのことも、以前よりすんなりと受け入れられるようになった。
絵馬伝承の詳細に関しては、住職さまが〝答えられる範囲でなら〟と教えてくれた。
『絵馬の伝承は不確かなものでしかありません。死んだ人同士が本当に幸せに暮らしているかどうかなんて、絶対に分からないでしょう?』
『けれど、残された人たちは、若くして亡くなった家族がせめて死後の世界で幸せになってくれればと願ってしまう。ですが、次第にそれを悪用しようと考える者が現れ始めました』
『意図的に誰かの死を願って絵馬を奉ずる、そうやって生者を死の淵に陥れる。でも、それが形になったかどうかなんて誰にも分かりはしない。生者と死者の名を記した絵馬を奉じた直後に、その生者が命を落とした例は実際にあります。けれど、それが絵馬のせいだという確証はやはりない』
現実にあるのは〝人が死んだ〟という事実だけ。
あとは、合間合間に、書庫へこもった住職さまを探し出しては声をかける……日々その繰り返しだ。
宛てがわれた個室は、私室として自由に使って良いと言われているけれど、実際には寝るときくらいしか足を運ばない。あとは、手洗いした服や下着を乾かすときぐらいだ。
そんな生活を数日繰り返しただけ。それでも、荒みきっていた私の心はだいぶ落ち着きを取り戻せている。
もしかしたら自分は、疲れていたのではなく傷ついていたのかもしれない。そのことも、以前よりすんなりと受け入れられるようになった。
絵馬伝承の詳細に関しては、住職さまが〝答えられる範囲でなら〟と教えてくれた。
『絵馬の伝承は不確かなものでしかありません。死んだ人同士が本当に幸せに暮らしているかどうかなんて、絶対に分からないでしょう?』
『けれど、残された人たちは、若くして亡くなった家族がせめて死後の世界で幸せになってくれればと願ってしまう。ですが、次第にそれを悪用しようと考える者が現れ始めました』
『意図的に誰かの死を願って絵馬を奉ずる、そうやって生者を死の淵に陥れる。でも、それが形になったかどうかなんて誰にも分かりはしない。生者と死者の名を記した絵馬を奉じた直後に、その生者が命を落とした例は実際にあります。けれど、それが絵馬のせいだという確証はやはりない』
現実にあるのは〝人が死んだ〟という事実だけ。