柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 今、彼はどんな顔をしているだろう。
 ノックもせずに部屋に立ち入ったことを怒っているかもしれない。そう思いながらも、相手の顔には視線を向けられない。

 そのくせに、痣と傷痕からはどうあっても目を離せなかった。

「どうして謝るの?」
「あ」
「やめないで。僕は、君に」

 ――触ってほしい。

 私の耳がおかしくなったわけではないなら、住職さまの声も掠れて震えていた。
 泣きたい気分で大きな傷痕に触れた途端、強く引き寄せられた。身体を締めつける二本の腕の感触……抱き締められているのだと一拍置いてから気づく。

 あ、と声が零れた。
 それを自覚する間もなく、私の唇は彼のそれに塞がれてしまった。声ごと閉じ込めたがってでもいるような、優しくも激しい口づけだった。

 縋りつき、自分から口づけを深めた。
 腰に力が入らず、脚が震え、それでもやめてほしくはない。

 私を掻き抱く両腕にこもる力は、微かに強張った後、ますます強くなった。
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