柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
蕩ける甘さとほんの少しの苦さを帯びた濃密な時間は、瞬く間に過ぎていく。
その頃になって、避妊をせず流されるように身を任せてしまったことに、私は微かな不安を覚えた。けれど、満たされていく身体と心を前に、その不安は瞬く間に霞んでしまう。あっさり霞ませて良いものではないと、頭では嫌というほど理解できているのに。
「明日名。僕も明日名が好きです」
「……あ」
「好きだ。明日名」
乱れた呼吸の合間を縫い、触れるだけの口づけが落ちてくる。
触れ合う唇も、たった今告げられた言葉を拾った耳の奥も、熱くて蕩けてしまいそうだ。
涙がこめかみを伝い落ちていく。その雫を舐め取るように、あなたは――尊さんは、私の目元へそっと唇を動かした。
「好き、……好き……」
愛を乞う私の声は止まらない。それなのに、どうしてだろう。
伝えても伝えても、あなたには正しい意味で伝わっていない気がしてならない。同じ言葉を、他ならぬあなた自身に返してもらったにもかかわらず。
それが怖くて、何度も何度も口にした。そればかり、繰り返し、何度も。
無性に泣きたくなる気持ちも、やはりそのままだ。想像していたよりもずっと広かった逞しい背中に、私は縋るように腕を巻きつけた。
*
***
*
【驟雨(しゅう-う)】
急に降りだす雨。にわか雨。夕立。
(精選版 日本国語大辞典より引用)
その頃になって、避妊をせず流されるように身を任せてしまったことに、私は微かな不安を覚えた。けれど、満たされていく身体と心を前に、その不安は瞬く間に霞んでしまう。あっさり霞ませて良いものではないと、頭では嫌というほど理解できているのに。
「明日名。僕も明日名が好きです」
「……あ」
「好きだ。明日名」
乱れた呼吸の合間を縫い、触れるだけの口づけが落ちてくる。
触れ合う唇も、たった今告げられた言葉を拾った耳の奥も、熱くて蕩けてしまいそうだ。
涙がこめかみを伝い落ちていく。その雫を舐め取るように、あなたは――尊さんは、私の目元へそっと唇を動かした。
「好き、……好き……」
愛を乞う私の声は止まらない。それなのに、どうしてだろう。
伝えても伝えても、あなたには正しい意味で伝わっていない気がしてならない。同じ言葉を、他ならぬあなた自身に返してもらったにもかかわらず。
それが怖くて、何度も何度も口にした。そればかり、繰り返し、何度も。
無性に泣きたくなる気持ちも、やはりそのままだ。想像していたよりもずっと広かった逞しい背中に、私は縋るように腕を巻きつけた。
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【驟雨(しゅう-う)】
急に降りだす雨。にわか雨。夕立。
(精選版 日本国語大辞典より引用)