柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 濃い血を残すべく闇雲に繰り返されてきた血族婚の結果、力を強く受け継いで生まれ落ちても、身体が弱かったり精神に破綻をきたしやすかったりと、さまざまな障害を抱える者が昔から多かったと聞く。成人するまで命を繋げない者も、一族の中では珍しくなかった。

 強い力を宿して無事に生まれてくる女子は、男子より数が少ない。母は生まれつき病弱だったそうだが、一族が躍起になり、幾度となく絶えかけた母の命の灯火を繋ぎ留めてきた。
 母を守りたかったというよりは、より強い力を持つ子を産むための母体を守りたかっただけなのだろう。重鎮たちは、大半が女という存在を軽んじている。

 母がいなくなれば、死後婚を正しく執り行える者がいなくなる。
 祭祀者なしに死後婚の儀は語れない。山奥に隠れるように座する寺院の財政を支えているのは、非業の死を遂げた身内の安寧を願って死後婚の儀に臨もうと考える富裕層たちだ。

 檀家の支えなくして寺院は成り立たぬ。だが、この寺院が抱える実状は他とは異なる。死後婚なくしてはすぐさま潰える、そう言っても過言ではなかった。
 だというのに、唯一の祭祀者である母を、誰もが軽んじる。父さえも母を蔑ろにするその無様な姿を、私とて幾度も目にしてきた。

 父と母のどちらかが命を落とさねばならぬ事態に至ったとして、そのとき切り捨てられるのは父だ。誰もが――父自身もそうと理解していながら、誰ひとり母の扱いを省みようとしない。
 母とてそれを分かっていた。分かっていて、重鎮たちが一堂に会する席へ、ろくな発言権も認められぬまま冷めた目をして居合わせるという。これ以上の茶番はない。

 代々受け継がれてきた、彼岸と此岸を繋ぐ力。
 それはすでにさまざまな意味で限界に辿り着こうとしていたが、なんとしても後世に繋げねばと、重鎮たちは躍起になっていた。
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