柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 噂は市井に流れ出る。そうなれば寺院の信憑性ごと薄れる。
 百にも満たぬ檀家の間を騒々しく駆け巡り、やがてはその親類や知人へと伝い流れていく。周囲はそれをひどく恐れ、私を非難し、跡継ぎの変更を嘆いた。

 ……お前たちこそが、よく動くその口を閉じれば良いものを。
 噂を作り上げているのは、他ならぬ一族の者たちだ。自ら流した噂が広まることを恐れるとは、滑稽にもほどがある。

 余計な噂を広めながら、奴らは私の足をこれでもかと引っ張る。
 寺院を、力を、あるべき姿に戻そうと躍起になる私の意志など見て見ぬふり。

 結局、そういう一族なのだ。腐敗はここ数年に始まったわけではない。母があの日告げた通り、私ひとりの力でそれを取り除くのは到底不可能な話だった。
 協力者が必要だと痛感していた。まともな能力を持つ者自体、今では数名しかいない。跡継ぎの交代こそ成されたとはいえ、できれば私は、一度は深く嫌悪した兄と和解したかった。兄にも私の理念を理解してほしかった。

 だが、なにもかもが私の願う通りにはいかない。
 跡継ぎの交代が決定して以来、兄は私と顔を合わせようともしなくなっていた。
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