柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
*
常人とは異なる私の髪と目を、父はとにかく毛嫌いしていた。
一族の中には、他にも似た異色を持つ人間がいる。力を残すため、近親者同士で子を成し続けてきた一族だ。こういった異変を抱えて生まれた者はなにも私だけではない、むしろ私のそれなど軽微と呼んで良い。身体や精神に深い障害を抱えて生を受ける者も、決して珍しくはなかった。
私たち双子が幼い頃から、父は兄を溺愛していた。当時は私よりも濃い色をしていた兄の徴が、それを助長した。
兄と私の立場が逆転して四年が経った今でも、その傾向は基本的に変わっていない。それどころか、父はますます私を敬遠するようになった。
……老害が。
男尊女卑の思想を捨てきれず、親子ほども齢の離れた母が抱える負担や気苦労を省みさえしない。そんな浅ましい人間が、やれ能力だなんだと声高に叫んだところで虚しくしか聞こえぬというのに、なんと愚かしい。
『住職が護を探している。お前も探してくれないか』
母にそう頼まれ、渋々ながらも承諾したのは小一時間前の話だ。
跡継ぎの立場を外れて以来、兄は私と顔を合わせたがらない。毛嫌いされているのだと手に取るように分かる。
だが、私とて望んで兄からこの立場を奪ったわけではない。的外れな悪意を滲ませる兄に対し、どうにかして和解できないかと考えていた私も、徐々にその気を削がれてきていた。
本堂の右に延びる細道の先には、草木の生い茂る荒れ地が広がっている。
その中央には巨木があった。兄と私が、幼い頃ともに遊んだ場所だ。
あの頃は普通の――否、他よりもずっと仲の良い兄弟だったと思う。
少なくとも、父からの嫌悪や暴言、暴力の類から、兄自ら身を呈して私を庇ってくれるくらいには。
常人とは異なる私の髪と目を、父はとにかく毛嫌いしていた。
一族の中には、他にも似た異色を持つ人間がいる。力を残すため、近親者同士で子を成し続けてきた一族だ。こういった異変を抱えて生まれた者はなにも私だけではない、むしろ私のそれなど軽微と呼んで良い。身体や精神に深い障害を抱えて生を受ける者も、決して珍しくはなかった。
私たち双子が幼い頃から、父は兄を溺愛していた。当時は私よりも濃い色をしていた兄の徴が、それを助長した。
兄と私の立場が逆転して四年が経った今でも、その傾向は基本的に変わっていない。それどころか、父はますます私を敬遠するようになった。
……老害が。
男尊女卑の思想を捨てきれず、親子ほども齢の離れた母が抱える負担や気苦労を省みさえしない。そんな浅ましい人間が、やれ能力だなんだと声高に叫んだところで虚しくしか聞こえぬというのに、なんと愚かしい。
『住職が護を探している。お前も探してくれないか』
母にそう頼まれ、渋々ながらも承諾したのは小一時間前の話だ。
跡継ぎの立場を外れて以来、兄は私と顔を合わせたがらない。毛嫌いされているのだと手に取るように分かる。
だが、私とて望んで兄からこの立場を奪ったわけではない。的外れな悪意を滲ませる兄に対し、どうにかして和解できないかと考えていた私も、徐々にその気を削がれてきていた。
本堂の右に延びる細道の先には、草木の生い茂る荒れ地が広がっている。
その中央には巨木があった。兄と私が、幼い頃ともに遊んだ場所だ。
あの頃は普通の――否、他よりもずっと仲の良い兄弟だったと思う。
少なくとも、父からの嫌悪や暴言、暴力の類から、兄自ら身を呈して私を庇ってくれるくらいには。