柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 なにがどう狂ってこんなことになっているのか、頭を抱えてしまいそうになる。
 とはいっても、歯車は巻き返せない。私たち兄弟があの頃に戻るなど、絶対にありはしない。

 滲んだ焦りを強引に掻き消しながら、私は荒れ地へ向かった。兄はきっとそこにいる、そんな気がしたからだ。
 直感というものは馬鹿にできない。大木の木陰に兄ともうひとりの人影を見つけた私は、半ば反射的に、生い茂る草むらの陰に身を隠した。

 盗み聞きをするつもりはなかった。だが。

(あい)は今年でいくつになったんだっけ」
「十四でございます」

 護の傍に腰を下ろしているのは、成人の儀を終えて二年が過ぎた私たち双子とさして変わらぬ齢に見える女性がひとり。
 私たちの従妹(いとこ)に当たる、藍だ。
 藍は、実年齢よりも遥かに齢を重ねた風貌をしている。それもまた、我々一族が負った業による結果だ。とはいえ、藍本人はさほどそれを気にしていない様子ではあるが。

「そうか。不思議なものだな、俺よりも年上に見えるくらいなのに」
「まぁ! 失礼よ、護兄さま!」

 くすくすと笑い合うふたりの声を聞きながら、複雑な気分になる。
 藍は、生まれて幾日も経たぬうちに兄の許嫁となった娘だ。物心がつく頃にはすでに兄へ懐いていた彼女は、今、齢十四の少女とはとても思えぬほどに美しく、また妖艶な雰囲気を醸し出している。

 ふたりが恋仲であることは周知の事実だ。
 だが、跡継ぎの変更は、そんなふたりの関係にも深刻な問題をもたらした。

 なぜなら、藍の今の許嫁は。
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