柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
尊さんは、こちらが恥ずかしくなってくるほど私に触れたがる。
初めて肌を重ねた夜、経験がないと遠回しに告げた彼は、あれから今日までの間、執拗に私を暴き続けている。
たどたどしさを滲ませて私の肌を泳いでいた指先は、回を追うごとに大胆になり、どこにどう触れれば私が陥落するのか、今では私より正確に把握できているみたいだ。
手首、髪、頬、瞼、唇。指を滑らせては、今度は同じ場所へ薄い唇を這わせてくる。
最後に触れ合う唇は簡単にほどかれ、間を置かずに身体も心も支配されてしまう。今夜もきっとそうなる。
あの一夜を機に、私は衣服を借り物の着物に切り替えた。
想像していた通り、着付けには骨が折れる。それでも着物を借りると決心した理由は、いくつかあった。
普通と異なる雰囲気に満ちたこの場所に、心まで呑み込まれたくない……頑なに張っていたその意地が緩んだこともひとつだ。ずっと不安に感じていたはずが、急にどうでも良くなってしまったのだ。むしろ、このまま尊さんの隣にいたいと願う気持ちが日増しに強くなっている。
量が減ってきた痛み止めの薬湯も、毎回口移しされるようになった。
恥ずかしいからと何度たしなめても、向こうは聞く耳を持たない。そのうち私も絆されてしまうから、余計に性質が悪かった。一方的に彼を責めるわけにもいかない。
薬湯を口に含むたび、尊さんは露骨に表情を曇らせる。多分、苦いからだ。嫌ならやめればいいのに、彼は頑なにそうしない。
わずかに開いた口の隙間から流し込まれるそれは確かに苦く、けれど自分ひとりで飲んでいたときに感じていた苦さとは違う気がしてしまう。私の喉の動きを確認すると、尊さんはすぐさま口づけを深め、わざと私の羞恥を煽る。
初めて肌を重ねた夜、経験がないと遠回しに告げた彼は、あれから今日までの間、執拗に私を暴き続けている。
たどたどしさを滲ませて私の肌を泳いでいた指先は、回を追うごとに大胆になり、どこにどう触れれば私が陥落するのか、今では私より正確に把握できているみたいだ。
手首、髪、頬、瞼、唇。指を滑らせては、今度は同じ場所へ薄い唇を這わせてくる。
最後に触れ合う唇は簡単にほどかれ、間を置かずに身体も心も支配されてしまう。今夜もきっとそうなる。
あの一夜を機に、私は衣服を借り物の着物に切り替えた。
想像していた通り、着付けには骨が折れる。それでも着物を借りると決心した理由は、いくつかあった。
普通と異なる雰囲気に満ちたこの場所に、心まで呑み込まれたくない……頑なに張っていたその意地が緩んだこともひとつだ。ずっと不安に感じていたはずが、急にどうでも良くなってしまったのだ。むしろ、このまま尊さんの隣にいたいと願う気持ちが日増しに強くなっている。
量が減ってきた痛み止めの薬湯も、毎回口移しされるようになった。
恥ずかしいからと何度たしなめても、向こうは聞く耳を持たない。そのうち私も絆されてしまうから、余計に性質が悪かった。一方的に彼を責めるわけにもいかない。
薬湯を口に含むたび、尊さんは露骨に表情を曇らせる。多分、苦いからだ。嫌ならやめればいいのに、彼は頑なにそうしない。
わずかに開いた口の隙間から流し込まれるそれは確かに苦く、けれど自分ひとりで飲んでいたときに感じていた苦さとは違う気がしてしまう。私の喉の動きを確認すると、尊さんはすぐさま口づけを深め、わざと私の羞恥を煽る。