柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―

《二》昔話

「明日名の髪は綺麗だね。まっすぐで、指がするする通る」
「ふふ、ありがとう。これはお祖母ちゃん譲りらしいです」

 ひとつの布団に一緒に横になって交わす会話は、内緒話めいていて胸が弾む。
 情事の後の気怠さが抜けきらないまま、そこに心地好い腕枕の感触が手伝って、私はぼんやりと微睡(まどろ)んでいた。

 尊さんは、腕枕をしていないほうの手で私の髪を撫でている。擽ったさに小さく身をよじりながら、私はうっとりと目を閉じた。
 自分の顔立ちには自信がないけれど、髪は気に入っている。癖なくまっすぐ伸びた黒髪は、自分が生まれ持った容姿の中で、大事にしていこうと思える数少ないひとつだ。

「お祖母ちゃん……そうか。明日名はお祖母さんと暮らしてたんだっけ」
「はい、十七歳のときに亡くなるまで。両親はもっと小さい頃に事故で死んでしまったから」
「……そう」

 両親の死も祖母の死も、私にとって少しずつ昔のことになってきている。
 不思議だ。天涯孤独の身になってから五年しか経っていないのに、大昔のできごとに感じてしまう日さえある。

 三人との別れは、どれもが突然だった。

 両親が事故に遭った日はひどい空模様だった。その影響で急遽学校が午後休みになり、私を迎えに向かう途中、ふたりが乗った車はダンプカーと衝突したらしい。
 らしい、としか言いようがないのは、ショックのせいでしばらく不安定な精神状態に陥った私が詳細を知ったのが、事故から数ヶ月が経った後だったからだ。

 祖母の死も、高齢だからいつお迎えが来ても、というような考えを抜きにするなら十分唐突だった。
 これといった病気もなく、前日まで元気に畑へ出ていた祖母は、その日居間で倒れ、私が学校から帰宅したときにはすでに冷たくなっていた。
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