柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
第四章 叢雨、彼岸と此岸の狭間

《一》君と僕の名前を

 今日も耳鳴りが聞こえる。
 梅雨はまだ明けない。細く降り続く雨の音に混ざり、きん、と鼓膜の奥に突き刺さってくる異音は、普段よりもさらに深く私を苛んでいた。

 尊さんは、初めて肌を重ねた日から一夜も置かず私を抱き続けている。
 拒絶はできない。したいとも思えない。私だって彼が好きで、だから少しくらい身体が怠くても拒むつもりはない。

 手製の数珠を渡してくれた日以来、尊さんが私に対して滲ませる感情には、妄執めいた気配が宿るようになった。そしてそれは、日を追うごとに色を濃くしている。
 中に潜り込んだまま行為を終えることがなにを意味しているか、知らないとは考えにくい。終わった後、彼はいつも愛おしそうに私の下腹を撫でるからだ。すでにそこに宿っていてもおかしくない新しい命が、見えてでもいるように。

 今日も、私は身体の一番奥、最も深い場所であなたのすべてを受け止める。
 妊娠したとしても私は構わない。けれど、あなたはどうだろう。これほど立派な寺院の住職であるあなたが、こんなふうに安易に子供を作っては、反対する人間も出てくるのでは。

 ……〝反対する人間〟?

 そんな人は多分いない。
 なにせ、ここには私とあなたしかいない。
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