柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 避妊をされずに抱かれ続けてきた本当の意味を、思い知らされた気分だった。
 私たちがこの場所にいる限り、どれだけ行為を重ねても、私の身体は新しい命を宿せないのだろう。

 私を抱くたび、あなたは一体どんな気持ちだったのだろう。
 そう思うと胸が締めつけられて、痛くて仕方なくて、指の代わりに今度は唇で同じ場所を塞いだ。

『孕んでくれればいいのに』

 逃げてしまいたくなる。今すぐにでもあなたを連れて、この場所から。
 理由があってここに留まっている。そう簡単には離れられない。それくらいは私にだって理解できている。それでも、あなたを縛りつける鎖を、感情の赴くまま引きちぎってやりたい気分だった。

「さっきはごめんね。苦しかったでしょう」

 遠慮がちに首筋を撫でられ、思わず笑ってしまった。
 ふふ、と零れた私の声に、つられたようにあなたも頬を緩める。その笑顔がこの上なく儚く見えて、息が詰まりそうで、けれど。

「ううん。けど、次に同じことするときは、する前にちゃんと教えてね」
「……え?」

 私の言葉を聞いたあなたは、分かりやすく固まった。
 聞き間違いだと思ったのか、指の先までぴくりとも動かなくなったあなたは、呆然と私を見つめるばかりだ。

 今なら笑って伝えられるかと思ったのに、どうやら無理みたいだ。
 涙が零れる。痛くて痛くて、けれどそれよりもつらくて苦しいことがある。そんなものなんか知らなくて良かったのではと確かに思うのに、それでもし、あなたが少しでも救われてくれるなら。

 それなら、こんな痛みくらい、なんてことはない気もしてしまう。

「一緒がいいの。尊さんがそうしたいなら、それでもいいから、一緒に」

 最後までは伝えきれなかった。
 震えた声ごと閉じ込めるように塞がれた唇は、私たちが交わしてきたどの口づけよりも熱かった。
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