柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
《二》集約する霧
翌日、日没後。
周囲の景色は薄闇に染まり始めている。空は、今日も昨日と同じ色だ。
「ねえ。今の時期じゃなかったら、ここって綺麗な星、ちゃんと見える?」
「うん。多分」
「多分?」
「忘れちゃった。星空なんて、ずっと見てなくて」
縁側に並んで腰かけ、私たちは他愛もない話を続けていた。
私の髪に指を這わせる尊さんの胸元へ頭を寄せ、私は小さく囁く。
「そっか。変なこと訊いてごめんね」
「いいえ」
この場所が普通ではないことを、尊さんはもう隠さない。
打ち明けてくれた夜――彼が私の首に手をかけたあの夜以来、この場所が同じ一日を繰り返していると知った私も、その話題を無理には避けなくなった。
かといって、それ以上の話はなにも伝えられていない。
例えば、いつから同じ時間を繰り返しているのかとか、どうしてそんなことになってしまったのかとか、その件に尊さんはどんなふうに関与しているのかとか、そういう詳細は分からずじまいだ。
いつか教えてくれるのかもしれないし、この先も教えてもらえないのかもしれない。ただ、自分からその話題に足を踏み込む気にはどうしてもなれなかった。
「ね、今度、旅行しない?」
「……りょ、こう?」
「うん。ふたりでおめかしして、一緒にお出かけするの。ここからすごく離れた場所に行って、景色を見たりお買い物したり、ご飯を食べたり、あとは……そうだなぁ、写真を撮ったりとか」
薄墨を撒いたような重い色の空を見上げ、私は浮かれた声をあげた。
一方の尊さんは、そんな私を少々訝しげに見つめている。
「星空が綺麗な場所も知ってるから、一緒に行こうね。連れてってあげる」
周囲の景色は薄闇に染まり始めている。空は、今日も昨日と同じ色だ。
「ねえ。今の時期じゃなかったら、ここって綺麗な星、ちゃんと見える?」
「うん。多分」
「多分?」
「忘れちゃった。星空なんて、ずっと見てなくて」
縁側に並んで腰かけ、私たちは他愛もない話を続けていた。
私の髪に指を這わせる尊さんの胸元へ頭を寄せ、私は小さく囁く。
「そっか。変なこと訊いてごめんね」
「いいえ」
この場所が普通ではないことを、尊さんはもう隠さない。
打ち明けてくれた夜――彼が私の首に手をかけたあの夜以来、この場所が同じ一日を繰り返していると知った私も、その話題を無理には避けなくなった。
かといって、それ以上の話はなにも伝えられていない。
例えば、いつから同じ時間を繰り返しているのかとか、どうしてそんなことになってしまったのかとか、その件に尊さんはどんなふうに関与しているのかとか、そういう詳細は分からずじまいだ。
いつか教えてくれるのかもしれないし、この先も教えてもらえないのかもしれない。ただ、自分からその話題に足を踏み込む気にはどうしてもなれなかった。
「ね、今度、旅行しない?」
「……りょ、こう?」
「うん。ふたりでおめかしして、一緒にお出かけするの。ここからすごく離れた場所に行って、景色を見たりお買い物したり、ご飯を食べたり、あとは……そうだなぁ、写真を撮ったりとか」
薄墨を撒いたような重い色の空を見上げ、私は浮かれた声をあげた。
一方の尊さんは、そんな私を少々訝しげに見つめている。
「星空が綺麗な場所も知ってるから、一緒に行こうね。連れてってあげる」