辺境のちっちゃな捨てられ領主は敵国女帝のお気に入りのようです~転生幼児、最強の家族とスキルを持つ秘密兵器でした~
 金貨三十枚といえば、王都で平均的な庶民の家族がひと月暮らせる程度の金額だ。開拓村で金貨を使う機会があるとも思えないが、まったくないよりはましということかもしれない。
 そして、問題は夜になって発生した。どうやら父――ラプハート辺境伯は、トーリを辺境に送るにあたり、護送費用もだいぶけちったようだ。開拓村までの道中、トーリにつけられたのは御者と護衛に雇われた冒険者四人。
 宿屋に宿泊するだけの路銀はないらしく野宿となったのだが、その冒険者達が、野営の場でトーリに向かって牙をむいたのだ。

「……さて、出すものを出してもらおうか?」

 冒険者が、トーリに向かって手を差し出した。四人いる冒険者のうちのリーダー格だ。薄汚れた革鎧に、悪人ですと顔に書かれているような人相の悪い男。

「出すものってなぁに?」

 トーリは、首をかしげてみせた。出すものと言えば、金銭だろうが、冒険者に関する費用は辺境伯家から支払われている。トーリが支払う必要はない。

「辺境伯から、金貨を預かってるんだろ? 護衛してやるんだから、寄越せよ」
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