辺境のちっちゃな捨てられ領主は敵国女帝のお気に入りのようです~転生幼児、最強の家族とスキルを持つ秘密兵器でした~
 リュディアは返事をしなかった。ただ、カップを口に運んで、小さく息をついた。
 それでよかった。言葉がなくても、伝わったとトーリには思えたから。
 二人でホットミルクを飲み終えた頃、ガイストがのそりと起き上がった。眠い目でトーリを見てから、今度はリュディアを見て、尾をゆるゆると振る。
『友よ、眠れそうか』

「うん」

『ならばよい』

 ガイストはまた丸くなった。あっという間に寝息を立て始める。

「なんだ、野性味のかけらもないな」

 その様子に、リュディアは小さく肩を揺らす。

「ガイストって、ああ見えてわりと甘えん坊で案外面倒見がいいんですよ」
「そなたと似ているな」
「……似てないと思いますけど」

 立ち上がりながら、彼女はトーリの頭に手を置いた。いつものように、ぐしゃぐしゃにするでもなく、ただそっと乗せるだけ。

「眠れ、トーリ。明日も、明後日もその次も、そなたが望む間は、ここでの生活は続くのだから」
「……はい」

 空になったカップを取り上げたリュディアは、そのまま静かに部屋を出ていこうとしかけ――そのまま戻ってきた。
 それから、ひょいとトーリを抱き上げる。

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