辺境のちっちゃな捨てられ領主は敵国女帝のお気に入りのようです~転生幼児、最強の家族とスキルを持つ秘密兵器でした~
 すっかり考え込んでいたからまったく気づいていなかったのだが、野営地に選んだ場所の周囲はどうやら野犬に囲まれているようだった。
 四方八方から、グルル……という犬が唸る声が聞こえてくる。

(野犬も、馬鹿にはできないって聞いてるし!)

 日本でも、野犬となった犬達が危険だとネットに情報が掲載されているのを見た記憶がある。鋭い牙に爪。大型犬相手にまともにやりあって、勝てる人間はそう多くない。
 ましてや、今のトーリは年齢相応五歳児だ。どうしよう。

「シャドウウルフだ、数が多い! 逃げるぞ!」

 どうやら、護衛の対象を放置して逃げる方を選んだらしい。
 シャドウウルフ――リーダーに率いられ、組織立った戦いをする魔物だったはず。五歳児から金銭を奪おうなんて考える冒険者が相手できる魔物ではなかったらしい。

「あらら……」

 とはいえ、トーリにも危機が迫っている。なにしろ、戦える人間は逃走してしまった。ついでに御者も。

(……どうしよ……そうだ!)

 馬車だ。馬車の中に逃げ込むのだ。子供一人なら、魔物達も見逃してくれるかもしれない。だって、食べるところが少ないのだから。
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