辺境のちっちゃな捨てられ領主は敵国女帝のお気に入りのようです~転生幼児、最強の家族とスキルを持つ秘密兵器でした~
 リュディアの陣を眠らせた夜のことを思い出す。あの時は、リュディアとラウガルトだけが眠らなかった。

「キヴィ、場所はわかる?」

『もちろんだ。奥の天幕だな』

「じゃあ、グラス公爵家の方からやっちゃうおうか」

 ガイストが影に潜った。次の瞬間には、陣の奥にある天幕の中に出る。
 そこにいたのは、リュディアより少し年上に見える金髪の男だった。地図を広げたまま、眠り込んでいる。燭台の火だけが、静かに揺れていた。

「……アルヴァリク」

 リュディアの口から、静かに彼の名が零れ落ちた。これが、リュディアの元婚約者か。彼の名を口にする時には、リュディアが複雑な表情をするのにトーリは気づいていた。
 彼の近くにはグラス公爵とエルマーグ、それから、彼らと似た特徴を持つ人が何人か。全員ぐっすり夢の中だ。

(これが、アルヴァリクか)

 トーリは、じっと彼の顔を見つめてみる。目を閉じているから目の色はわからないけれど、髪の色はリュディアとそっくりだった。
 リュディアがかつて愛した人。リュディアを殺して皇位を奪おうとした人。
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