時をかける恋の舞台
仕事へ行く準備を整え、のりおと一緒に外回りに出た。途中、ふと視線を向けると、ありさが年配の男性と楽しそうに話しているのが見えた。愛斗は声をかけるタイミングを逃し、そのまま駐車場へ向かい、一度会社に戻って残りの仕事を片付けた。
仕事が終わり、夕方にスーパーへ立ち寄ると、またありさの姿があった。
パスタ麺の棚の前で、商品を手に取ったり戻したりしている。愛斗が近づいて声をかけると、ありさはぱっと顔を上げた。
「愛斗さん、こんにちは! あの…カルボナーラの作り方、わかりますか? 麺の袋には何も書いてなくて」
「そんなのスマホで調べたらすぐ出てくるじゃないですか」
「えっ、スマホで調べられるんですか?」
「うん、もちろんだよ」
愛斗はスマホを取り出し、検索したレシピ画面を見せた。するとありさは「もう少し離してくれる?」と言い、画面を三十センチほど遠ざけて見ていた。それからバッグからメモ帳とペンを取り出そうとしたので、愛斗は「URLを送ろうか? その方が早いよ」と提案した。
「URLって、何ですか?」
「この作り方のページを、直接あなたのスマホに送ることだよ」
「そうなんだ! 教えてくれてありがとう」
愛斗は思わず笑った。
「どういたしまして。若いのにスマホのこと、知らないことが多いんですね。もっと詳しいと思ってたのに」
「知りませんよ、私だっておばさんですから。老眼も来てるし、新しいことは苦手なんです」
「えっ、まだ若いでしょう。老眼なんて早すぎますよ」
「本当はまだまだ若いつもりなんだけど、目だけが先に年を取っちゃったみたいで、本当に恥ずかしいわ」
ありさはそう言って、はにかんだように笑った。
買い物を済ませ、二人で並んで歩き出した。そのとき、後ろから突然自転車がスピードを出して近づいてきた。愛斗は反射的にありさをかばい、腕を引いて自分の胸元に抱き寄せた。
「大丈夫ですか?」
ありさは一瞬、愛斗の腕の中で体を固くした。愛斗も自分が抱きしめていたことに気づき、慌てて離れた。ありさの頬は紅潮し、胸がドキドキと高鳴っているのがわかった。
「あ、そういえばさっき、年配の男性と話していたでしょう? あの人とはどういう関係なんですか?」
「ああ、あの人? 弟だよ」
「えっ、あんなに年配の方が?」
「いや、弟のお兄ちゃん、つまり私の兄だよ」
「ああ、そういうことか!」
話していると、同僚の美波が近づいてきて、いきなり愛斗の腕に絡みついた。体をぴったりとくっつけ、ベタベタと触れてくる。愛斗は嫌な顔をして、そっと腕をほどいた。
「やめてくれます? 本当に迷惑なんです」
「この女の人、誰なの?」
美波がありさを睨むように見るので、愛斗ははっきりと答えた。
「友達です」
美波は不満そうに唇を尖らせ、その場を去っていった。ありさが心配そうに尋ねる。
「愛斗くんの彼女なの?」
「違いますよ。会社の同僚です。毎日ああやって必要以上に触れてくるので、本当に困ってるんです」
「そうなんだ…」
「でも、ありささんなら、いくらベタベタされても全然嫌じゃないですけどね」
愛斗が照れくさそうに言うと、ありさは嬉しそうに微笑んだ。
「わかった。ありがとう」
愛斗のアパートの前まで来ると、ありさが「よかったら家に上がって。さっき買った材料で、カルボナーラを作ってあげるわ」と誘ってくれた。二人で部屋に入り、ありさは手際よくキッチンに立った。湯気が立ち上り、チーズとベーコンのいい香りが広がった。
「できたわ。食べてみて」
一口食べると、クリーミーでちょうどよい塩加減で、心まで温かくなった。
「おいしいです! 本当においしい、ありがとうございます」
「よかった。たくさん食べてね」
ゆっくりと話しながら食事を楽しんだ後、愛斗は家に帰った。
次の日の朝、愛斗は仕事へ向かった。一方ありさは、父の高が働く店へ行き、そこには吉村勇一もいた。三人でしばらく世間話をした後、勇一からサプリメントを分けてもらった。そして、勇一にも愛斗のことが大好きだと、そっと打ち明けた。
仕事が終わり、夕方にスーパーへ立ち寄ると、またありさの姿があった。
パスタ麺の棚の前で、商品を手に取ったり戻したりしている。愛斗が近づいて声をかけると、ありさはぱっと顔を上げた。
「愛斗さん、こんにちは! あの…カルボナーラの作り方、わかりますか? 麺の袋には何も書いてなくて」
「そんなのスマホで調べたらすぐ出てくるじゃないですか」
「えっ、スマホで調べられるんですか?」
「うん、もちろんだよ」
愛斗はスマホを取り出し、検索したレシピ画面を見せた。するとありさは「もう少し離してくれる?」と言い、画面を三十センチほど遠ざけて見ていた。それからバッグからメモ帳とペンを取り出そうとしたので、愛斗は「URLを送ろうか? その方が早いよ」と提案した。
「URLって、何ですか?」
「この作り方のページを、直接あなたのスマホに送ることだよ」
「そうなんだ! 教えてくれてありがとう」
愛斗は思わず笑った。
「どういたしまして。若いのにスマホのこと、知らないことが多いんですね。もっと詳しいと思ってたのに」
「知りませんよ、私だっておばさんですから。老眼も来てるし、新しいことは苦手なんです」
「えっ、まだ若いでしょう。老眼なんて早すぎますよ」
「本当はまだまだ若いつもりなんだけど、目だけが先に年を取っちゃったみたいで、本当に恥ずかしいわ」
ありさはそう言って、はにかんだように笑った。
買い物を済ませ、二人で並んで歩き出した。そのとき、後ろから突然自転車がスピードを出して近づいてきた。愛斗は反射的にありさをかばい、腕を引いて自分の胸元に抱き寄せた。
「大丈夫ですか?」
ありさは一瞬、愛斗の腕の中で体を固くした。愛斗も自分が抱きしめていたことに気づき、慌てて離れた。ありさの頬は紅潮し、胸がドキドキと高鳴っているのがわかった。
「あ、そういえばさっき、年配の男性と話していたでしょう? あの人とはどういう関係なんですか?」
「ああ、あの人? 弟だよ」
「えっ、あんなに年配の方が?」
「いや、弟のお兄ちゃん、つまり私の兄だよ」
「ああ、そういうことか!」
話していると、同僚の美波が近づいてきて、いきなり愛斗の腕に絡みついた。体をぴったりとくっつけ、ベタベタと触れてくる。愛斗は嫌な顔をして、そっと腕をほどいた。
「やめてくれます? 本当に迷惑なんです」
「この女の人、誰なの?」
美波がありさを睨むように見るので、愛斗ははっきりと答えた。
「友達です」
美波は不満そうに唇を尖らせ、その場を去っていった。ありさが心配そうに尋ねる。
「愛斗くんの彼女なの?」
「違いますよ。会社の同僚です。毎日ああやって必要以上に触れてくるので、本当に困ってるんです」
「そうなんだ…」
「でも、ありささんなら、いくらベタベタされても全然嫌じゃないですけどね」
愛斗が照れくさそうに言うと、ありさは嬉しそうに微笑んだ。
「わかった。ありがとう」
愛斗のアパートの前まで来ると、ありさが「よかったら家に上がって。さっき買った材料で、カルボナーラを作ってあげるわ」と誘ってくれた。二人で部屋に入り、ありさは手際よくキッチンに立った。湯気が立ち上り、チーズとベーコンのいい香りが広がった。
「できたわ。食べてみて」
一口食べると、クリーミーでちょうどよい塩加減で、心まで温かくなった。
「おいしいです! 本当においしい、ありがとうございます」
「よかった。たくさん食べてね」
ゆっくりと話しながら食事を楽しんだ後、愛斗は家に帰った。
次の日の朝、愛斗は仕事へ向かった。一方ありさは、父の高が働く店へ行き、そこには吉村勇一もいた。三人でしばらく世間話をした後、勇一からサプリメントを分けてもらった。そして、勇一にも愛斗のことが大好きだと、そっと打ち明けた。