時をかける恋の舞台
ありさの姿に戻った愛斗は、いつものように喫茶店へ仕事に向かった。
店に着くと、先に出勤していた涼子が笑顔で挨拶をしてくれた。
「おはよう、ありささん。今日もよろしくね」
「おはようございます。こちらこそよろしくお願いします」
二人は軽く世間話を交わしたあと、それぞれ持ち場について仕事を始めた。しばらくして、店長がありさを呼び出した。
「ありささん、もう働き始めて4日目だね。そろそろ接客とお客様から注文を伺う仕事も担当してもらおうかと思ってるんだ」
「はい、頑張ります」
「それで、これがハンディターミナルだ。これで注文を入力するんだけど、使い方はわかるかい?」
手渡された機械を見つめ、ありさは戸惑ったように首をかしげた。
「えっと…ハンディターミナル、ですか? 初めて見るので、よくわからなくて…ごめんなさい」
「大丈夫だよ。後でゆっくり教えるから、まずはお客様のところへ行って、直接注文を聞いてきてくれる?」
ありさは「はい」と返事をして、お客様の席へ向かった。テーブルに着いていた年配のご夫婦が、スマホを手に困った様子でこちらを見ている。
「すみません、このQRコードの読み取り方がわからなくて…どうやるんでしょうか?」
「あの、私もまだ詳しくなくて…」と、ありさが言葉を濁らせていると、涼子がさっと近づいてきて手伝ってくれた。
「お客様、こうやって画面を合わせると読み取れますよ。これで大丈夫ですか?」
「わあ、できたわ! ありがとう」
お客様が笑顔になったのを見て、ありさは安堵した。
「涼子さん、助かりました。ありがとうございます」
「いいのよ、お互い様だから」
それからしばらくして、ありさがトイレの清掃をしていると、バタンと何かにぶつかる音がした。見上げると美波が立っていて、悪びれる様子もなくそのまま立ち去っていった。ありさはぶつかった衝撃で落ちた清掃道具を拾い、気を取り直して仕事を続けた。
仕事が一段落し、更衣室へ向かおうとしたところで、再び店長に呼び止められた。
「ありさちゃん、今日は遅番を手伝ってくれないか? 夜は特に忙しくなるから、人手が足りなくてね」
「えっ、今日は用事が…」
「頼むよ。専業主婦の方なら、時間も融通が利くだろう?」
店長の言葉に、ありさは言い返せなくなってしまった。結局愛斗がシフトを調整し、その日は夜まで働くことになった。
仕事が終わったあと、ありさは涼子の家へ遊びに行った。二人はお茶を飲みながら、今日の出来事や趣味の話など、ゆっくりと語り合った。
「はい、これよかったら食べて。手作りのギリシャヨーグルトなの」
「わあ、ありがとうございます! おいしそう」
ヨーグルトを味わったあと、一緒に小麦粉とバターを混ぜて、手作りクッキーを焼いた。いい香りが部屋中に広がり、焼き上がったクッキーを丁寧にラッピングした。
それから涼子の部屋で、二人はさらに心を通わせ合い、肌を重ね合わせた。
別れ際、ありさは家へと戻り、夜のうちに正子の姿に戻った。愛斗が帰ってくるのを待っているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。
目が覚めると朝になっていた。正子は焼きたてのクッキーを持って愛斗の家へ向かった。
「おはよう、愛斗くん。これ、昨日涼子さんと一緒に作ったの。よかったら食べて」
「わあ、ありがとう! …うん、すごくおいしいよ、ありささん」
「ふふっ、ありがとう」
それから二人は、予定していたデートへ出かけることになった。愛斗が車のドアを開けると、ありさは嬉しそうに助手席へと乗り込んだ。


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