生贄聖女ですが、モラハラクズ魔王と国を立て直します!
ソフィアは長い夢を見ていた。
いや、夢ではない……かもしれない。
日本という国で大阪という繁華街に住む中年の女の人生を振り返っていた。
ソフィアは最初は驚いたが、
不思議なことにこれも自分だと分かった。
ガヤガヤ………
たこ焼き屋や居酒屋、八百屋や魚屋、
店が立ち並ぶ商店街をママチャリが走っている。
派手な服を着た若者たちの間をガチャガチャとペダルを回しながら、走っている。
顔には熱い風が当たる。
「ホンマに暑いわぁ〜」
たしか、あの日はいつもの商店街に買い物に出かけた。
頭はショートカットでブロッコリーのようなパーマ。
少しむらさきがかった髪。
Tシャツは虎がガオーと口を開け、スパッツはヒョウ柄。
「ふふふ、ふふーん♪」
自転車の荷物かごにはコロッケ。
お父ちゃんが大好きなものだ。
「はよ、かえって食べさせな。お父ちゃんがうるさいわ」
大きなおしりをふりふり、スピードを上げた。
左手には何十年も大事にしていた小さなダイヤが一つついた結婚指輪が光っている。
その時だった、
信号の無い交差点を大きなトラックが轟音をあげながら左折してきたのは……
『あかん!』と思ったが、そこからは記憶は無かった。
子どもは2人。息子は結婚し、近くに住み、孫もいた。
下の娘はまだ結婚せず家にいたが、仲良くいつもくだらない冗談を言い合っていた。
夫は高校からの仲で、ポッチャリ太り頭は剥げていたが、
……何でも話せる最愛の人だった。
(お父ちゃんにコロッケ食べさせてあげたかったな……)
心に残ったのはそんな言葉だった。