仮恋愛

         *

ガラガラと職員室の扉を開いて、息をつまらせてやって来た先。


月先生が目を見開いて立ってた。


「お前、何で」



狐が威嚇するみたいな目線を向ける凛ちゃんに「借りるね!!」と。



月先生の手を引っ張って校長先生に「おい!!」と声をかけられても知らんぷり。



月先生を中庭の人目のつかない場所に移動して、月先生は私の手を払った。



「辞めてくれ。


お前は怖くないのか?


俺は共犯かもしれないのに」



私を払った手は、かすかに震えていた。



何処か刹那そうな視線を私に向けていた月先生。


悲しくなるのはこっちだよ……。



「何でこんな事をしたの?


……昨日は、あんなに突き放すことを言ったのに、なんで?


何で、こんな優しくするの?



月先生は、私を一体どうしたいの?」




月先生は、俯いていて答えない。



目をつぶって、現実を見ないようにそっと、自分の世界に閉じこもってしまうみたいに。



「何とか言ったらどうなの!!



私は、答えてくれなきゃーーー追いかけ続けるしか無いんだからね!!」




跳ね上がるように、月先生は顔を上げた。



目を見開いて、私に近づき顔を寄せた。



「お前、それを意味することはどうゆうことか分かってんのか?」



「先生のものになるってことだよ!!



もう、私はその覚悟は出来てるんだよ!!



ずっと前から、先生のものになるって決めてるからーーー私は追いかけてたの!!


強くて優しい先生のそばにいたいし、選ばれたいって心の底から思ったから!!」




「なら、諦めろ。



俺は、お前に興味など微塵もないしーーーしつこい女は嫌いだ」



「でも……諦めたくない!!


そう……そうだよ。


先生の事が好きになったんだから!!


好きになったら、気持ちは止められようにないでしょ?


だから、私がーー嫌いになるまで、私は月先生を追いかける!!

そうするしかないの!!」



月先生は目を大きく見開いて、目を細めた。



暫く私達は見つめ合ってーー。


月先生が目を逸らした。



月先生は、私に手ほどきを残した。


バチッとデコピン。

「痛っ!!」

軽めの、優しげな痛みが頭を包む。

目を伏せ「丁度いいタイミングでお前と離れられると思ったから……利用しただけだ」と。

「え?」


「お前に……嫌われればって。

めちゃくちゃに、心を傷つければーーー雨と鞭を使い分ければ、俺の事を姫が嫌いになってくれる。

そう信じた結果が、まさかこれだとは。


俺は完敗だ。

俺は、どうしたらいいんだ……」と頬を赤らめて、月先生は去っていく。


         *
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