その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂
――翌朝。

私立鳳(おおとり)学園の中庭

眩しい朝の光が降り注ぐ中、1年の高橋多久は、

いつも通りパンを片手にベンチに座っていた

その目の前を、乱れのない美しい黒髪ストレートをなびかせ、

校則通りの綺麗な制服に身を包んだ「あの人」が通り過ぎる

学年トップの成績を誇り、誰にでも敬語を使う、学園の誰もが憧れる生徒会長

「あら、多久君。おはようございます。今日も良い天気ですね」

すれ違いざま、九条澪が上品に微笑みながら声をかけてきた

昨夜、あれほど圧倒的な暴力で世界の頂点に立った最狂の総長「レイ」の面影は、昼間の彼女にはどこにもない

だけど多久は、その笑顔の奥にある彼女の『本当の優しさ』を知っている

「はい! おはようございます、ミオさん!」

多久が真っ赤な顔で、でも誇らしげに声を返した

澪はふふ、と妖艶に唇を緩めると、人差し指を自分の唇に当て、小さくウインクをしてみせた

「ふふ、学校では校則厳守。この秘密は、内緒にしてくださいね?」

サラリと黒髪を揺らして歩き出す彼女の背中を、多久はもう、遠い存在だとは思わなかった

一生、この人の部下として地獄の果てまでついていこう

心の中でそう深く誓い、前を向いた

昼はお淑やかなお嬢様、夜は夜風に敬語を響かせる最強の総長。

彼女の伝説は、これからもこの街の夜に刻まれ続けていく。


〜fin〜
< 43 / 47 >

この作品をシェア

pagetop