はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜

エピローグ

半年後。

寒さが厳しい大安吉日。季節は、バレンタインへ向けて、美味しそうなチョコレートが並び始める頃になっていた。

この日、千雪と哲平はティエドゥールへ招かれていた。

千雪は相変わらずのお団子ヘアだが、いつもとは違いお洒落に仕上がっている。美容院へ行き、綺麗にセットしてもらったのだ。服装も、この日のために用意したお淑やかな紺色のセットアップである。

哲平もベージュのジャケットに黒いチノパンという余所行きの格好だ。ワックスでセットした髪型もきちんと整っている。

二人は、綺麗に除雪されたティエドゥールの、スモーキーブルーのドアの前に立った。千雪は『本日貸切』の文字が描かれたプレートを、そっと指でなぞった。かつてのお茶会を思い出す。

千雪の隣に立つ哲平は、自分の胸までしかない千雪を見下ろして、愛おしそうに笑った。

「入ろうか」

千雪は哲平を見上げて笑顔を返した。

ーーー

中へ入ると本日の主役が千雪達を出迎えてくれた。翔也と愛子だ。

翔也はライトグレーのスーツ。愛子はクリーム色のワンピース姿である。頭にはおもちゃのティアラを乗せていた。まるで絵本から飛び出した、王子様とお姫様のようだ。

今日は翔也と愛子の『婚姻届記入式』なのだ。

結婚式も披露宴も行わないと決めた二人は、せめて記念にと、遊び心満載の素敵なイベントを企画した。

半年前。千雪と電話をした次の日、翔也は愛子の元へ向かい、自分の本当の気持ちを吐露した。そしてほぼ毎日、根気強く愛子の両親を説得したのだ。

代々家族で経営してきた『こばやし記念病院』の跡取り娘である愛子は、病院の経営難や後継者の問題から、養子に入り、資金援助もしてくれるという外科医と、お見合い結婚を強いられていた。

正真正銘、政略結婚である。

しかし、二人の熱意ある説得に根負けした愛子の両親は、可愛い一人娘のため、とうとう家族経営に(こだわ)るのを止めたのだ。
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