はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜
「何やってんの?」

彼女たちの背後から背の高い男子が清香たちを覗き込んだ。部活へ行く途中の哲平である。

「あっ!八奈見くん!やだ〜、これから部活?」

三人は振り向き、清香は視線を上げた。その人物が哲平だとわかると三人は黄色い声をあげ、清香は口を真一文字に結んだ。

「そう、部活。で?上原さんを囲んで何の話してんの?珍しくね?」

「えー、別に何でもないよー。ねぇ?」

三人は顔を見合わせて確認し合った。哲平は怪訝な顔をして三人と清香を見てから腕を組む。一人を三人で囲む位置関係から、明らかに清香が吊し上げられている。

バレーボールを通じてスポーツマンシップを叩き込まれている哲平は、見過ごすことができず、つい口を挟んでしまった。

「一対多数は、よろしくないんじゃないか?」

「失礼だなぁ。私たちの方が、上原さんに怒られていたのに。ねぇ?」

三人はまた顔を見合せた。

「ふぅん、そうなの?上原さんも、一人で絡んで行くなよ。また誤解されるぞ」

「絡んでなんかないけど……。うん……ありがとう」

清香の陶酔したような表情に、哲平は珍しさを感じ戸惑った顔をした。微笑んだつもりはないのだが、その哲平の緩んだ顔が清香の目にはそう映っていたのだ。

(八奈見くん優しい。私を庇ってアドバイスまでくれた!)

哲平は腕を解いて、四人へ向けてひらひらと軽く手を振って去って行った。

「じゃ!」

(手を振ってくれた!八奈見くんが私に手を振ってくれた!)

清香は哲平の言動を、完全に自分勝手な解釈に置き換えた。こうなったら清香の妄想は止まらない。今までつまらない学校生活だった分、その反動は大きい。

「かっこいいー!イケメーン!早く掃除してバレー部の練習見に行こうよ」

三人はそう言うと、ほうきを動かし始めた。清香は三人に目もくれず、無意識に哲平の後姿を追っていた。

「八奈見くんが、私の名前を呼んで、私に手を振ってくれた」

清香の小さな呟きは、誰の耳にも聞こえなかった。
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