はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜
ある日の夕方。翔也の修行先のカフェへ、愛子の父親が訪ねてきた。そして翔也に、仕事が終わったら話がしたいので、待たせてほしいと告げた。
翔也はどきどきしながら仕事を続けたが、緊張のあまり手につかない。翔也の姿を見て気の毒に思ったマスターが、翔也を上がらせて、店内の一席を貸してくれた。
「鈴木くん。申し訳ないが愛子と別れてくれないか」
唐突に別れ話を切り出された翔也は困惑した。
「愛子に見合い話が来ていてね。先方は外科医で、その上小林家に婿養子に入ってくれると言うのだよ。愛子は『こばやし記念病院』の大事な跡取り娘だ。あの子には医者と結婚して病院を守ってもらわねばならん。すまないが娘のことは諦めてもらいたい。これは私たちからの、お詫びの気持ちだ。カフェの資金にでも当ててくれ」
そう一方的に詰め寄られ、封筒を差し出された翔也は、言い返すことができなかった。
「愛子の結婚相手は多額の資金援助を申し出てくれていてね。お恥ずかしい話だが、今の家の経営状態は切実でね。正直、彼の資金援助の話は願ってもない条件なんだ。愛情も大事だが、財力は必ずあの子の力になる。親として一人娘の幸せを願うのは当然だろう?君がだめなんじゃない。君自身のことは認めている。だが、我が家の内情も分かってほしい」
翔也は無言だった。
(またか。僕が望むものはいつだって、僕の意思と関係なく遠ざけられる。あの団地の家も、母さんも、ちぃも。今度は愛ちゃんまで。確かにお義父さんの言う通り、財力は力になるし裏切らない。愛情なんて何の保証もないんだ。仲良かった父さんと母さんだって、結局別れたじゃないか。そもそも僕に決定権はないんだ。分からない……幸せって何なんだ?僕と愛ちゃんの幸せのために、どうしたらいい?)
翔也はやるせない気持ちが抑えられない。無気力に、黙って頷いた。
「お金は要りません。僕も愛子さんの幸せを願う一人ですから」
その後どうやって家まで帰ったか、翔也は記憶を飛ばしていた。
翔也はどきどきしながら仕事を続けたが、緊張のあまり手につかない。翔也の姿を見て気の毒に思ったマスターが、翔也を上がらせて、店内の一席を貸してくれた。
「鈴木くん。申し訳ないが愛子と別れてくれないか」
唐突に別れ話を切り出された翔也は困惑した。
「愛子に見合い話が来ていてね。先方は外科医で、その上小林家に婿養子に入ってくれると言うのだよ。愛子は『こばやし記念病院』の大事な跡取り娘だ。あの子には医者と結婚して病院を守ってもらわねばならん。すまないが娘のことは諦めてもらいたい。これは私たちからの、お詫びの気持ちだ。カフェの資金にでも当ててくれ」
そう一方的に詰め寄られ、封筒を差し出された翔也は、言い返すことができなかった。
「愛子の結婚相手は多額の資金援助を申し出てくれていてね。お恥ずかしい話だが、今の家の経営状態は切実でね。正直、彼の資金援助の話は願ってもない条件なんだ。愛情も大事だが、財力は必ずあの子の力になる。親として一人娘の幸せを願うのは当然だろう?君がだめなんじゃない。君自身のことは認めている。だが、我が家の内情も分かってほしい」
翔也は無言だった。
(またか。僕が望むものはいつだって、僕の意思と関係なく遠ざけられる。あの団地の家も、母さんも、ちぃも。今度は愛ちゃんまで。確かにお義父さんの言う通り、財力は力になるし裏切らない。愛情なんて何の保証もないんだ。仲良かった父さんと母さんだって、結局別れたじゃないか。そもそも僕に決定権はないんだ。分からない……幸せって何なんだ?僕と愛ちゃんの幸せのために、どうしたらいい?)
翔也はやるせない気持ちが抑えられない。無気力に、黙って頷いた。
「お金は要りません。僕も愛子さんの幸せを願う一人ですから」
その後どうやって家まで帰ったか、翔也は記憶を飛ばしていた。