はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜
翔也は静かに諭す。

「話し合って決めたよね?これからの僕らのこと。愛ちゃんは跡取り娘として、代々続く『こばやし記念病院』を守らなきゃいけないんだよ。この病院の素晴らしい理念は、愛ちゃんにしか守れないでしょ?」

「だからって」

「こばやし病院を無くしちゃだめだ。少なくとも僕は、この病院と理学療法士の愛ちゃんに助けられたからね。凄く感謝してるし、絶対に必要な病院だよ。僕は、愛ちゃんの手で病院を存続させてほしい」

「それはそうだけど」

「でも僕には、病院を建て直す経営力も資産も無いから。悔しいけど僕じゃ無理だ。愛ちゃんを好きってだけで、何の役にも立たない。だから愛ちゃんの幸せのために、離れる事で役に立ちたい」

「やだ。別れたくない。翔也は役立たずなんかじゃないし!私の幸せって言うのなら一緒に居てよ」

「僕の意思は変わらない。何度話しても答えは同じだよ。お相手は外科医で、資金援助してくれて、婿養子に入ってくれるんだろう?こんないい話、断る理由がないじゃない?」

「そんなの、体のいい乗っ取りだよ」

不貞腐れた声で愛子が吐き捨てた。

「愛ちゃんが居れば大丈夫。院長の娘が睨みを効かせていれば乗っ取られないよ」

できる限り穏やかな口調で、冗談交じりに翔也が諭す。

「……」

翔也の言葉を笑いで返せないほど、愛子は消沈していた。その後の沈黙が居た堪れない。そんな話し合いの最中に、あろうことか千雪がティエドゥールにやって来て、愛子の存在を知られてしまった。翔也は内心焦ったが、上手く愛子を帰すことができた。
< 162 / 172 >

この作品をシェア

pagetop