藤堂彬の誤算だらけの結婚生活

まさかの結論

* *  *

 弥からメッセージが届いたのは、正月休みが明けた次の週だった。
 大学が始まってボランティアが再開し、藍も日常のペースに戻った。周りは、どこか憂鬱そうにしているけれど藍の気持ちはむしろ逆。年がら年中夏休み、みたいな暮らしをしていたから、こういう普通の生活が嬉しい。
 弥からのメッセージは【話があるから会えないか?】というものだった。
 内容は書いていないけれど、なんとなく予想はつく。十中八九、結婚のことあるいはボランティアに関することだろう。
 もしかしたら陽菜がなにかを言ってくれたのかもしれない。
 いずれにしても彬へ突撃したことも含めて話し合わなくてはならない、と思い、藍は近くのカフェで会うことにした。
 駅ナカのカフェはランチも提供しているようだが、午後二時と中途半端な時間だからか、空いてる。待ち合わせの時間より早くついて、先に席で待っている藍は、窓の外をぼんやりと眺めた。
 途中恋人同士を思しき男女ふたりが手を繋いで信号を渡っているのを見て、鼓動が速くなり頬が熱くなった。
 初詣の時のことを思い出したからだ。
 いやいやいや、あれは医療行為みたいなもの、意味はないないない。
 かぶりを振って邪な考えを振り払おうとする。が、あまりうまくいかなかった。
 そしてこれは、今に限ったことではない。ここのところいつもこうだ。
 ふとした時に、彬のことを考えてしまっている。これまで、彼とあったことを反芻するように、思い出すのだ。
 ピーラーの使い方を教えてくれたこと。
 熱が出た夜に、ずっと近くにいてくれたこと。
 成長途中だと言ってくれたこと。
 初詣に一緒に行ってくれたこと……。
 それらすべては、彼にとって結婚の義務を果たすためにしてくれたことで、そこになんの感情もないはずだ。
 それなのに、特別なこととして受け止めてる、受け止めたいと思っている自分がいる。家族でも友達でもない人に対する、得体のしれないこの気持ちはいったいなんなのか、わからなくて戸惑っている。
 とても落ち着かないので知りたいと思う一方で知るのが怖いというわけのわからない状態だ。
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