藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 彬は自分の車で来ていた。
 持っているのは知っていたが、乗ったことはない。助手席に乗り込むと、黙ったまま出発した。
 さっきまでとは空気感が違って思えた。
 無表情で無駄なことを言わないのはいつものことだけど、どことなく不機嫌なような……。
 運転は丁寧だが、信号待ちではハンドルに置いた手は指でトントントンと叩いている。珍しく苛立っているようだ。
 仕事中に藍のために病院まで来なくてはならなくなったからだろう。それはもっともだ。
 気持ちがどんどん沈んでいく。何回迷惑をかければいいのだろう?
 よりによって彼への気持ちに気がついた途端に、こんなことになるなんて。
 今度こそ離婚を言い渡されるかもしれない。
 彼は半休をとったようで、そのまま家に帰ると言う。
 家につくと、リビングにてコートを脱ぐ彼に、藍は思い切って頭を下げた。
「すみません! ご迷惑をかけました」
 けれど返事はなく、彼はベランダの方を向いたまま黙っている。背中から怒りのオーラを感じて藍は泣きそうになった。
 これはいよいよまずいことになった、離婚だろうかと絶望的な気持ちになった。
 以前も同じような状況になったことがあるが、あの時とは心境が違っている。あの時は自由がなくなるかもしれないのがひたすら悲しかった。今はそれより彼と離れなくてはならないのが悲しくてたまらない。好きだと気がついた途端にお別れとは。
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