藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 自業自得だとはいえ、自分はなんて恋愛運が悪いのだろう?
 などと思い俯いていると、ふいに彼がこちらを向いた。
 その表情は明らかに怒っている。いよいよだ、と藍は身構えた。
「今日は、なぜあの男と一緒だったんだ?」
 その質問に藍は瞬きを繰り返す。覚悟していたのとは全然違う内容だったからだ。
 てっきり、体調が悪くなったことについての苦言があるものと思っていた。
 あの男とは弥のことだろうか?
 いやそうなのだろうが、なぜそんなに怒っているのかがわからない。
「……会おうっていわれたので。彬さんにも、今日出かけることはお知らせしましたが」
「あの男が一緒だとは聞いていない。君はあの男のことをなんとも思っていないと言ったな。それなのになぜふたりで会った?」
 なぜなぜと彼は言うが、藍からしてみれば彼の態度の方が『なぜ』だった。
「そ、それは、幼馴染なので……」
 これ前にも言ったんだけどなと思いながら説明する。それにしてもどうして彼は弥にここまで敵意をむき出しにしているのだろう。
 前に言われた事が許せないのだろうか。
「幼馴染だからふたりきりで会うというのか? 君はもう結婚しているのに非常識じゃないか? 誰かに見られてよからぬ噂が流れたらどうする? 結婚は君一人の問題ではない。俺の評判にも関わることだ」
 一方的にあれこれ言われてポカンとしてしまう。
 人間ではないと言われている彼がここまで感情をあらわにしているのは珍しい。というかはじめて見る。
 まるで浮気を疑っていかのような……とそこまで考えて弥から聞いた話を思い出す。むくむくと反発心が湧いてきた。だって、それはこちらのセリフだ。
「そんな……私は幼なじみなのでなにもやましいことはありません。それを言うなら彬さんこそ、あ、彬さんだってカフェで女の人と会ってたんでしょう?」
 どうして彼が弥とのことにこだわるのかはわからないが、自分だって同じことをしたんじゃないか?
「俺が?」
「彬さんがこの前大学近くのカフェで女の人と会ってるのを見たって、わっくんが言ってました。彬さんだって同じことをして……」
 もし彼の相手が本当の恋人だったりしたら、ここですべてが終わってしまうと思うのに口は止まらなかった。
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