藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
それはもちろん、今のこの状況を彬自身が受け入れているからだ。
「お前、どうするんだよ」
「なにがだ?」
「だって、ほら資金のために結婚したって言ってたじゃないか。メリットがなくなったからやめる? だけど濱中さんの話によるとあれだからそれはないか」
メリットがなくなったら離婚とは一般的には非情であり得ない話だが、医者の世界ではそれほど珍しくはない。
半年前にも、理事長選に敗北した教授の娘が医師の夫と離婚した。相手の男は、力のなくなった教授との姻戚関係は解消できてよかったと公言していた。
それよりも彬は、濱中から話を聞いたという部分に反応する。彬の気持ちがバレているということか。なぜこんなに話が回るのが早いのだ。
「いや〜! やっぱりそうなったか。おめでとうおめでとう。赤飯炊こうな」
背中をバシバシ叩かれて、くそうと思うが否定はしない。
自分の気持ちは確信したからだ。彬はプライドを保つために自分の間違いを認めないような愚かな人間ではない。研究においては間違いを認めなければ新しい道が開かれることはないからだ。
人を愛する気持ちは確かに存在した。
形はないけれど、それは人の行動になって現れる。それで証明できるのだ。
以前はこんな不確かなもの、本当に存在するのかと疑ってもいたがそれに対する答えも出た。
藍の笑顔を見るとふっと心が解け一日の疲れがとれる。彼女の話はいつまでも聞いていたいと思う。それは実際に起こる現象で、この気持ちは確かに存在する。疑いようがないと思う。
けれど、それでめでたしめでたしとはいかない。それはもちろん、ふたりが本当の意味での夫婦ではないからだ。しかもお互いにかかわらない、好きにならないという約束までしている。彬の気持ちは完全に、ルール違反なのだ。
ただ、情けないという気持ちはあれど、以前のようなもやもやと苛立ちはなくなった。なぜ俺はこんなことを?という疑問が晴れ自分の行動の説明がつけば、苛立たなくなったのだ。
新年会へ行くという彼女が気になるのは心配だからだし、迎えにいくのは大切にしたいから。そして彼女がそれを楽しんだと言うならば、迎えにいったその時間は彬にとっては有益な時間となる。
そう。
藍を好きなのだ、という確信があればなにひとつ無駄なことなどない。
だから彬が今悩んでいるのはそこではない。そうではなくて。
「いや、お前みたいな奴をメロメロにするなんて、奥さんすごいな。そんなにいい女なら俺が結婚したかったよ。大須賀社長なんでお前にしたんだろ? 俺の方が絶対にいい男、いい旦那になれるのに」
「お前みたいないい加減なやつに、藍の夫は務まらない」
ムッとして思わず言い返すと、三橋がにや〜と笑う。
「ほうほうほう、いやーうんうん、そうだそうだ。奥さんの旦那はお前だけだ。いやーそんな嫉妬なんかしちゃってびっくりだけど感動だ」
嬉しそうに言い続ける三橋の口を塞ぎたいが塞げない。
「で? 実際、どんな感じでお前はいい旦那をしてるんだ?」
問いかけられてうっとなる。
「お前、どうするんだよ」
「なにがだ?」
「だって、ほら資金のために結婚したって言ってたじゃないか。メリットがなくなったからやめる? だけど濱中さんの話によるとあれだからそれはないか」
メリットがなくなったら離婚とは一般的には非情であり得ない話だが、医者の世界ではそれほど珍しくはない。
半年前にも、理事長選に敗北した教授の娘が医師の夫と離婚した。相手の男は、力のなくなった教授との姻戚関係は解消できてよかったと公言していた。
それよりも彬は、濱中から話を聞いたという部分に反応する。彬の気持ちがバレているということか。なぜこんなに話が回るのが早いのだ。
「いや〜! やっぱりそうなったか。おめでとうおめでとう。赤飯炊こうな」
背中をバシバシ叩かれて、くそうと思うが否定はしない。
自分の気持ちは確信したからだ。彬はプライドを保つために自分の間違いを認めないような愚かな人間ではない。研究においては間違いを認めなければ新しい道が開かれることはないからだ。
人を愛する気持ちは確かに存在した。
形はないけれど、それは人の行動になって現れる。それで証明できるのだ。
以前はこんな不確かなもの、本当に存在するのかと疑ってもいたがそれに対する答えも出た。
藍の笑顔を見るとふっと心が解け一日の疲れがとれる。彼女の話はいつまでも聞いていたいと思う。それは実際に起こる現象で、この気持ちは確かに存在する。疑いようがないと思う。
けれど、それでめでたしめでたしとはいかない。それはもちろん、ふたりが本当の意味での夫婦ではないからだ。しかもお互いにかかわらない、好きにならないという約束までしている。彬の気持ちは完全に、ルール違反なのだ。
ただ、情けないという気持ちはあれど、以前のようなもやもやと苛立ちはなくなった。なぜ俺はこんなことを?という疑問が晴れ自分の行動の説明がつけば、苛立たなくなったのだ。
新年会へ行くという彼女が気になるのは心配だからだし、迎えにいくのは大切にしたいから。そして彼女がそれを楽しんだと言うならば、迎えにいったその時間は彬にとっては有益な時間となる。
そう。
藍を好きなのだ、という確信があればなにひとつ無駄なことなどない。
だから彬が今悩んでいるのはそこではない。そうではなくて。
「いや、お前みたいな奴をメロメロにするなんて、奥さんすごいな。そんなにいい女なら俺が結婚したかったよ。大須賀社長なんでお前にしたんだろ? 俺の方が絶対にいい男、いい旦那になれるのに」
「お前みたいないい加減なやつに、藍の夫は務まらない」
ムッとして思わず言い返すと、三橋がにや〜と笑う。
「ほうほうほう、いやーうんうん、そうだそうだ。奥さんの旦那はお前だけだ。いやーそんな嫉妬なんかしちゃってびっくりだけど感動だ」
嬉しそうに言い続ける三橋の口を塞ぎたいが塞げない。
「で? 実際、どんな感じでお前はいい旦那をしてるんだ?」
問いかけられてうっとなる。