藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 しかもノンカフェインのカフェオレまで準備してあるという完璧さ。体調管理のためとはいえ優しすぎる。
 藍としては、朝ごはんを彼と一緒に食べられるのは嬉しい。けれどテンションが上がってしまい気持ちがふわふわとするのを隠すのが大変で困ってしまうのだ。
 ——手料理なんて反則だわ……!
 夜ご飯はなにを食べたいかを聞かれカレーと答えた。
 てっきりテイクアウトしておいてくれるのかと思ったら、まさか作ってくれるなんて。
 もちろんこれも身体のことを考えてのことだろう。手料理の方が身体にいいに決まっている。だからこれは体調管理の一環で、深い意味なんてないとわかっている。
 わかっていても勝手に心がふわふわとする。
 好きな人に優しくされて、平常心を保っていられるほど藍は恋愛に慣れていない。なにせ超初心者なのだから。
 それにしても。
 ——エプロン姿もカッコよかった……。
 もともとカッコいいとは思っていたけれど、好きだと自覚してからは、なにをしていてもカッコいいと思ってしまう。
 重症だ重症だと思いながら、リビングダイニングへ行くとすでにテーブルはセットされていた。
「すみません。なにもかもしてもらって」
「いや、気にするな。そもそも一緒に住みはじめてから今まで、君にやってもらってたんだからこのくらいは当然だ」
 そうはいっても藍の場合はやりたくてやっていたこと。それを嫌な顔せず食べてくれていたのだから、むしろこちらが感謝しなくてはならない。
 けれど彼はそう思わないようだ。
「これからは、君の邪魔にならない範囲で俺もやるよ。もともとひとりの時はそれなりにやっていたんだし」
 けれどそこで言葉を切って、考え込む。そして伺うように藍を見る。
「これは君にとって、余計なことだろうか……? やりたいことを奪うつもりはないのだが」
 まるで重大案件かのような真剣な表情に驚いて、藍は首を横にふった。
「そんな風には思いません。私も全部できるわけじゃないし、分担するのも楽しいです」
 答えるとほっとしたように表情を緩めた。
「ならそうしよう。もちろん君のやりたいことは邪魔しない」
「わ、わかりました」
「やめてほしいと思うところがあれば遠慮せずに言ってくれ。その……。そのあたりの機微に俺は鈍い」
 やっぱり最近の彼は以前と違っている。以前の彼は、常に自分の意見が決まっていて迷いなく言葉にしているように思えた。
 けれど今は違う。
 どこがどうともいえないが、自分の考えよりも藍の気持ちを優先してくれているような……。
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