藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
三橋のアドバイス2
* * *
午後七時を過ぎた白川医科大のエントランスホールにて、目当ての人物を見つけた彬は手をあげ声をかける。
「三橋」
相手がこちらに気がつき足を止めた。
「おう、藤堂。お疲れ」
「お疲れ。ちょっといいか? 相談したいことがあるんだ」
「え、お前が俺に? 珍しいな……第三チームは順調だったんじゃないか?」
研究について、彼の方から情報を求めたり相談があることはよくあるがその逆はあまりないからか、驚かれる。
「いやそっちじゃなくて……。プライベートの相談だ」
少し声を落として目的を告げると、もっと意外だという顔をされる。
「い、忙しいなら諦めるが……」
「いやいやいや、大丈夫。じゃあ場所を変えようか」
職場でできる話でもないので、ちかくの居酒屋へ行く。週末で店はごった返していたが、運よくカウンターに滑り込めた。
「久しぶりだなお前と飲むの。あーこんなことなら、濱中さんも呼べばよかったな。あ、だけどあの人、もうイギリスに帰っちゃったんだったっけ。相変わらず忙しいそうだ」
「ああ、もらった雑誌の礼をするつもりだったのに次に連絡したらもう出国したあとだった」
「礼はべつにいいんじゃない? お前の面白いとこ見られたから、超ラッキーとか言って喜んでたし」
レモンサワーのジョッキを持って、三橋がくくくと笑った。
黙ったまま見ていると彼は意外そうに眉を上げる。
「あれ、いつもみたいに怒らないじゃん。調子狂うな」
その通り、いつもなら嫌味のひとつも言っている。
ふたりはよく連絡を取り合っているようだから、この前の件も三橋に知られているとは思っていたが、目の前で笑い話にされるのは癪だ。だがこれから助言を求める立場としては黙っているしかない。それに。
「濱中さんとお前のおかげで、自分の気持ちに気がついたからな」
そう言って生ビールのジョッキをあおる。
実際感謝するべきだ。
このふたりがいなかったら、未だに自分は自分の気持ちに気がつかずにもやもやイライラしていただろう。
そしてその時間が長ければ長いほど、藍の気持ちを手に入れるための時間をロスしていたことになる。笑い者にされるくらいは、どうってことない。
なぜか三橋が両手で心臓のあたりを押さえてのけぞった。
「どうかしたか?」
「……いや、素直な藤堂くんはまじで心臓にハート型の矢をバンバン撃ってくるなと思って」
「は?」
「なんでもない。それで? プライベートで相談って?」
午後七時を過ぎた白川医科大のエントランスホールにて、目当ての人物を見つけた彬は手をあげ声をかける。
「三橋」
相手がこちらに気がつき足を止めた。
「おう、藤堂。お疲れ」
「お疲れ。ちょっといいか? 相談したいことがあるんだ」
「え、お前が俺に? 珍しいな……第三チームは順調だったんじゃないか?」
研究について、彼の方から情報を求めたり相談があることはよくあるがその逆はあまりないからか、驚かれる。
「いやそっちじゃなくて……。プライベートの相談だ」
少し声を落として目的を告げると、もっと意外だという顔をされる。
「い、忙しいなら諦めるが……」
「いやいやいや、大丈夫。じゃあ場所を変えようか」
職場でできる話でもないので、ちかくの居酒屋へ行く。週末で店はごった返していたが、運よくカウンターに滑り込めた。
「久しぶりだなお前と飲むの。あーこんなことなら、濱中さんも呼べばよかったな。あ、だけどあの人、もうイギリスに帰っちゃったんだったっけ。相変わらず忙しいそうだ」
「ああ、もらった雑誌の礼をするつもりだったのに次に連絡したらもう出国したあとだった」
「礼はべつにいいんじゃない? お前の面白いとこ見られたから、超ラッキーとか言って喜んでたし」
レモンサワーのジョッキを持って、三橋がくくくと笑った。
黙ったまま見ていると彼は意外そうに眉を上げる。
「あれ、いつもみたいに怒らないじゃん。調子狂うな」
その通り、いつもなら嫌味のひとつも言っている。
ふたりはよく連絡を取り合っているようだから、この前の件も三橋に知られているとは思っていたが、目の前で笑い話にされるのは癪だ。だがこれから助言を求める立場としては黙っているしかない。それに。
「濱中さんとお前のおかげで、自分の気持ちに気がついたからな」
そう言って生ビールのジョッキをあおる。
実際感謝するべきだ。
このふたりがいなかったら、未だに自分は自分の気持ちに気がつかずにもやもやイライラしていただろう。
そしてその時間が長ければ長いほど、藍の気持ちを手に入れるための時間をロスしていたことになる。笑い者にされるくらいは、どうってことない。
なぜか三橋が両手で心臓のあたりを押さえてのけぞった。
「どうかしたか?」
「……いや、素直な藤堂くんはまじで心臓にハート型の矢をバンバン撃ってくるなと思って」
「は?」
「なんでもない。それで? プライベートで相談って?」