藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
それなのに、彼の反応は真逆だった。
どうして帰らないのだ?と尋ねられ、今はまるで迎えにきているかのようだ。
「それは私にもわからない。……もしかしたらひと言文句を言いたいのかも」
そんな人ではないとは思いつつ、ぐるぐると自分だけで考えていては、悪いことばかり頭に浮かぶ。理由を話さずに無視する藍に怒って、直接別れを言いにきているのかもしれないなんてことまで考えてしまう。
《まさかあ。そりゃ、本当の夫婦だったらそうだよ。可愛さ余って憎さ百倍って言葉もあるくらいだもんね。けど、そうじゃないならそれはないよ。むしろ実家にいてくれる方が都合がいいんじゃない?》
「そうだよね」
本当にわからない。
なにより無駄を嫌う彼が毎日毎日、時間を使ってここまで来る。そして寒空の下、一時間ほど粘る時もあるのだ。
「とにかくいつまでもこのままはよくないよ。旦那さんがどういうつもりかはわからないけど、会わない時間が長ければ長いほど、悪い方向にいきそう」
「そう……だよね」
実際、会うのを拒んだ回数を重ねるほど、会いづらくなっている。
この状況が長引いていいことはなにもない。
「どうせ言わなくちゃならないんだから、早い方がいいよね……。明日、連絡をとって本当のことを話そうかな……。はるちゃん、失恋したら慰めてくれる?」
気が早いけどそう言わずにはいられない。
なにせ恋もはじめてだから失恋もはじめてなのだ。
《もちろんだよー。どーんとこい! だけどそうとも限らないと思うけどなー》
「どうして?」
《旦那さんも藍のことが好きって可能性、私はあると思うよ? 少なくとも行動から考えたらそうとしか思えない》
「まさか、そんな。あり得ないよ」
《本当に? だって会ってもらえないってわかってて、毎日家に通うなんて愛がなくちゃできないよ。まあなんか初恋拗らせた中学生みたいなやり方だけど》
「だったらなおさら違うよ。だって彬さんだよ? あんな完璧な人が中学生みないなことするわけがないでしょ」
彼が本当に藍を好きなのだとしたら、もっとスマートかつ確実な方法でアプローチするだろう。それがどういうやり方かといわれたら見当もつかないのだけれど。
いずれにしても、陽菜の言うことは間違いだ。
失恋パーティの日程は結果報告の時に決めることにして、通話を終わらせる。
ベッドにゴロンと横になり、薄暗い天井を見つめ明日への覚悟を決める。
ここ一週間、ひとりでずっと考えていた。
父の話を聞いた時は、申し訳なくて、つらくて、こんなことになるのなら、結婚の話ははじめから断ればよかったと後悔した。けれど、一週間経っていろいろなことを思い出すにつれて、彼には申し訳ないけれどこうなったこともよかったと思うようになったのだ。それは自由を知り、成長することの喜びを知った。そして一生経験することはないと思っていた恋をした。そして、手術を前向きに受けようと思えるようになったのだ。
つらいけれど、この気持ちを知らなければよかったとは思わない。
別れは仕方がないとして、誠心誠意謝ったあとは、お礼を言おう。天井を見つめて藍は決意していた。
どうして帰らないのだ?と尋ねられ、今はまるで迎えにきているかのようだ。
「それは私にもわからない。……もしかしたらひと言文句を言いたいのかも」
そんな人ではないとは思いつつ、ぐるぐると自分だけで考えていては、悪いことばかり頭に浮かぶ。理由を話さずに無視する藍に怒って、直接別れを言いにきているのかもしれないなんてことまで考えてしまう。
《まさかあ。そりゃ、本当の夫婦だったらそうだよ。可愛さ余って憎さ百倍って言葉もあるくらいだもんね。けど、そうじゃないならそれはないよ。むしろ実家にいてくれる方が都合がいいんじゃない?》
「そうだよね」
本当にわからない。
なにより無駄を嫌う彼が毎日毎日、時間を使ってここまで来る。そして寒空の下、一時間ほど粘る時もあるのだ。
「とにかくいつまでもこのままはよくないよ。旦那さんがどういうつもりかはわからないけど、会わない時間が長ければ長いほど、悪い方向にいきそう」
「そう……だよね」
実際、会うのを拒んだ回数を重ねるほど、会いづらくなっている。
この状況が長引いていいことはなにもない。
「どうせ言わなくちゃならないんだから、早い方がいいよね……。明日、連絡をとって本当のことを話そうかな……。はるちゃん、失恋したら慰めてくれる?」
気が早いけどそう言わずにはいられない。
なにせ恋もはじめてだから失恋もはじめてなのだ。
《もちろんだよー。どーんとこい! だけどそうとも限らないと思うけどなー》
「どうして?」
《旦那さんも藍のことが好きって可能性、私はあると思うよ? 少なくとも行動から考えたらそうとしか思えない》
「まさか、そんな。あり得ないよ」
《本当に? だって会ってもらえないってわかってて、毎日家に通うなんて愛がなくちゃできないよ。まあなんか初恋拗らせた中学生みたいなやり方だけど》
「だったらなおさら違うよ。だって彬さんだよ? あんな完璧な人が中学生みないなことするわけがないでしょ」
彼が本当に藍を好きなのだとしたら、もっとスマートかつ確実な方法でアプローチするだろう。それがどういうやり方かといわれたら見当もつかないのだけれど。
いずれにしても、陽菜の言うことは間違いだ。
失恋パーティの日程は結果報告の時に決めることにして、通話を終わらせる。
ベッドにゴロンと横になり、薄暗い天井を見つめ明日への覚悟を決める。
ここ一週間、ひとりでずっと考えていた。
父の話を聞いた時は、申し訳なくて、つらくて、こんなことになるのなら、結婚の話ははじめから断ればよかったと後悔した。けれど、一週間経っていろいろなことを思い出すにつれて、彼には申し訳ないけれどこうなったこともよかったと思うようになったのだ。それは自由を知り、成長することの喜びを知った。そして一生経験することはないと思っていた恋をした。そして、手術を前向きに受けようと思えるようになったのだ。
つらいけれど、この気持ちを知らなければよかったとは思わない。
別れは仕方がないとして、誠心誠意謝ったあとは、お礼を言おう。天井を見つめて藍は決意していた。