藤堂彬の誤算だらけの結婚生活

弥の告白

 彬に真実を話すと決めた藍は次の日の朝、ボランティアがはじまる前に、彼にメッセージを送った。
【今日、帰宅します。その時全部お話しします】
 そして返事を待たずに、スマホを閉じて仕事へ入った。
 考えはじめると悪いことばかり頭に浮かぶから、とにかく一心不乱に仕事をして午後五時に仕事を終える。
 スマホを見る勇気がなくて一旦、落ち着こうとロビーに出ると、見知った顔に迎えられた。
「藍ちゃん、お疲れ」
「わっくん……」
 弥だった。
 頭の中が彬のことでいっぱいだった藍は面食らう。
「どうしたの?」
「近くまで来てるから会いたいなと思って。メッセージ入れたんだけど」
「ごめん、見てなかった」
「いいよ。それより、はるちゃんから聞いたんだけど、実家に帰ってるって本当? なにかあるなら相談にのるよ。ご飯食べに行こうか。もちろん帰りは家まで送る」
「えーっと……。私、今日は大切な用があるから、また今度ね」
 彬に今日帰宅すると伝えてあるからでもあるが、正直なところ弥と話をすること自体も気が重い。
 きっと結婚についての話になるはずだ。心配してもらえるのはありがたいが、今は否定的な話を聞きたくない。
「誰かと会うの? 車で来てるから現地まで送るよ。その間にでもいいから話を聞いてほしい。とりあえず行こうか」
 そう言って彼は大学の門に向かって歩き出す。
 それは藍が帰る方向でもあるから仕方なくそれに従った。
 広い大学内の図書館があるあたりは、授業がある建物はないのでこの時間はほとんど人がいない。
 もう日が落ちて薄暗く、綺麗に整備された庭園の中、ランプに照らされた歩道を歩く。
「どこへ行くの? 会う人ってはるちゃん?」
「そうじゃなくて、今日は、自宅に帰ろうと思ってて。だから電車で帰るね」
 送ってもらう必要はないという意味で答えると、弥が立ち止まった。
「どうして? 実家に帰ってるんじゃないの? てっきり先生との結婚を止めたんだと思ったのに」
「そ、そういうわけじゃ……」
 とはいえ今日でお終いだ。
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