藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
迎えにきてくれたことや弥との会話の内容には、少し期待したくなる。けれど例えば彼が藍に形だけの妻以上の気持ちを持ってくれていたとしても父の嘘を知ったら吹き飛ぶだろう。
まずはこの話からはじめるべきだ。
「あの、彬さん。実家にまで来てくれていたのに会わなくてごめんなさい。理由があって……。今日はそれを話ししなくてはと思って帰ってきたんです」
すると彬は頷いてソファに座る。
藍もコーナーソファの斜めの位置に腰をおろした。
膝の上に置いた手をぎゅっと握る。緊張でどうにかなってしまいそうだ。
「あの……実家で、私、父から話を聞いてしまったんです」
「社長から?」
「はい、あの……大須賀製薬が資金を出しているプロジェクト、例の件。資金を減らすという話は、ただの噂なんです……!」
目を閉じて真実を告げると、彬は沈黙する。怒っているのだろうかと、お恐る恐る彼を見ると、どこか驚いたようにこちらを見ている。
理解力のある彼にしては変な反応だなと思いながら言葉を加える。
「つまり父は彬さんに嘘を言ったんです。その、彬さんと私をお見合いさせるために。彬さんは資金の心配なく研究をしたいから結婚したんですよね。だけどもとから、心配なんてしなくてよかった。……結婚する意味が……なかったんです……」
最後は小さな声になってしまったがどうにかこうにか言い終えた。そしてなにを言われてもいいように、身がまえる。
だが返ってきたのは予想外の言葉だった。
「なんだ、そんなことか。もっと大事なことかと……。いやでもよかった」
心底ほっとしたように息を吐いている。
「よかった? そ、そんなことって……。彬さん、彬さんにとってはなんのメリットもない結婚だったんです。今までのこと、全部無駄だったんですよ」
あまりにも変な反応に思わず諭すように言ってしまう。すると彼はもっと驚くべき言葉を口にした。
「それは知ってたよ」
「え……! 知ってた?」
「ああ」
「い、いつから……?」
「いつだったかな……。ちょっと前に大学の方で話が出て。……そうかそれで藍は家に帰ってきづらくなったんだな。よかった、よかった」
なにがよかったのかさっぱりわからなくて唖然とする。
「てっきり俺がなにかやらかしたのかと思って焦ったよ」
まずはこの話からはじめるべきだ。
「あの、彬さん。実家にまで来てくれていたのに会わなくてごめんなさい。理由があって……。今日はそれを話ししなくてはと思って帰ってきたんです」
すると彬は頷いてソファに座る。
藍もコーナーソファの斜めの位置に腰をおろした。
膝の上に置いた手をぎゅっと握る。緊張でどうにかなってしまいそうだ。
「あの……実家で、私、父から話を聞いてしまったんです」
「社長から?」
「はい、あの……大須賀製薬が資金を出しているプロジェクト、例の件。資金を減らすという話は、ただの噂なんです……!」
目を閉じて真実を告げると、彬は沈黙する。怒っているのだろうかと、お恐る恐る彼を見ると、どこか驚いたようにこちらを見ている。
理解力のある彼にしては変な反応だなと思いながら言葉を加える。
「つまり父は彬さんに嘘を言ったんです。その、彬さんと私をお見合いさせるために。彬さんは資金の心配なく研究をしたいから結婚したんですよね。だけどもとから、心配なんてしなくてよかった。……結婚する意味が……なかったんです……」
最後は小さな声になってしまったがどうにかこうにか言い終えた。そしてなにを言われてもいいように、身がまえる。
だが返ってきたのは予想外の言葉だった。
「なんだ、そんなことか。もっと大事なことかと……。いやでもよかった」
心底ほっとしたように息を吐いている。
「よかった? そ、そんなことって……。彬さん、彬さんにとってはなんのメリットもない結婚だったんです。今までのこと、全部無駄だったんですよ」
あまりにも変な反応に思わず諭すように言ってしまう。すると彼はもっと驚くべき言葉を口にした。
「それは知ってたよ」
「え……! 知ってた?」
「ああ」
「い、いつから……?」
「いつだったかな……。ちょっと前に大学の方で話が出て。……そうかそれで藍は家に帰ってきづらくなったんだな。よかった、よかった」
なにがよかったのかさっぱりわからなくて唖然とする。
「てっきり俺がなにかやらかしたのかと思って焦ったよ」