藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
とりあえず怒っているわけでなさそうなのは安心したがそれにしてもわけがわからない。
なぜ彼は父の嘘を知っていたのに結婚生活を続けていたのだろう?
しかもこの言い方だと、藍が実家から戻らないのは彬に対して怒っているのではないかと心配していたかのようだ。
だから毎日実家に来ていたのだろうか?
それは、つまり……?
……わからない。
「藍」
彬が姿勢を正してこちらを見た。
「は、はい」
つられて藍も背筋を伸ばして答える。
なにやら空気感が変わったような気がする。
「本当はこの段階で言うつもりはなかったんだが、もうこうなったら言わないでおく方がよくなさそうだ。だから言っておく」
「はい」
「俺は……」
けれどそこで、彼は言葉を切って口を閉じ、そのまま沈黙した。たっぷり一分たっても言葉は出てこず、まるで電池が切れたかのように固まっている。
二分経って、ついに藍は耐えきれなくなり首を傾げる。
「彬さん……?」
「……ダメだ‼︎」
突然彼は大きな声を出し、向こうを向いて深呼吸をしている。
いったいなにごと⁉︎と、目を見開く視線の先でぶつぶつと言っている。
「ただ事実を言うだけだ! それだけだ! なのになぜこんな難しい?」
そんなに重大なことを言おうとしているのだろうかと、藍は胸がドキドキした。
「あの、それって私が聞いてもいいことなんでしょうか?」
よほどのことなのだろうと思い問いかけると、再びこちらを向いた。
「君が聞くべきだ。だが、聞いたあともどうか冷静でいてほしい。不快だろうが、そのあとは君の気持ちに沿うように善処する」
なにやら物騒な話になってきて緊張する。
「わ、わかりました。お願いします」
その後も彼はあーとかうーとか言って精神統一していたが、さらに三分が経ちついに思い詰めたような表情で口を開いた。
「藍、俺は……俺は、君が……好きだ。君を、あ、愛しているんだ!」
静かな部屋に響き渡ったその言葉に、藍の思考がフリーズする。
耳から聞いた言葉の意味がうまく形を作らない。
愛してる? 誰が、誰を……?
「や、約束違反なのは重々承知だ。だが、こういうのは理屈ではないみたいで、自分ではどうにもならなかった。気がついたら好きになっていたんだ。いやこれは単なる言い訳だが……」
彬が慌てたようにあれこれ言う。それでも藍は反応できない。
まさか彼が自分のことを?
そんなこと……。
「あり得ない……」
思わずそう呟くと、彼は「うっ」とうめいた。
「そうだあり得ない。確かに、それはそうなんだが、……申し訳ない」
そして肩を落としてしゅんとしている。
慌てて藍は首を横に振った。
「あ、あり得ないってそういう意味じゃないです! 非難してるわけじゃなくて、そんな風に想ってもらえるなんて信じられないっていうか、夢みたいっていうか」
なぜ彼は父の嘘を知っていたのに結婚生活を続けていたのだろう?
しかもこの言い方だと、藍が実家から戻らないのは彬に対して怒っているのではないかと心配していたかのようだ。
だから毎日実家に来ていたのだろうか?
それは、つまり……?
……わからない。
「藍」
彬が姿勢を正してこちらを見た。
「は、はい」
つられて藍も背筋を伸ばして答える。
なにやら空気感が変わったような気がする。
「本当はこの段階で言うつもりはなかったんだが、もうこうなったら言わないでおく方がよくなさそうだ。だから言っておく」
「はい」
「俺は……」
けれどそこで、彼は言葉を切って口を閉じ、そのまま沈黙した。たっぷり一分たっても言葉は出てこず、まるで電池が切れたかのように固まっている。
二分経って、ついに藍は耐えきれなくなり首を傾げる。
「彬さん……?」
「……ダメだ‼︎」
突然彼は大きな声を出し、向こうを向いて深呼吸をしている。
いったいなにごと⁉︎と、目を見開く視線の先でぶつぶつと言っている。
「ただ事実を言うだけだ! それだけだ! なのになぜこんな難しい?」
そんなに重大なことを言おうとしているのだろうかと、藍は胸がドキドキした。
「あの、それって私が聞いてもいいことなんでしょうか?」
よほどのことなのだろうと思い問いかけると、再びこちらを向いた。
「君が聞くべきだ。だが、聞いたあともどうか冷静でいてほしい。不快だろうが、そのあとは君の気持ちに沿うように善処する」
なにやら物騒な話になってきて緊張する。
「わ、わかりました。お願いします」
その後も彼はあーとかうーとか言って精神統一していたが、さらに三分が経ちついに思い詰めたような表情で口を開いた。
「藍、俺は……俺は、君が……好きだ。君を、あ、愛しているんだ!」
静かな部屋に響き渡ったその言葉に、藍の思考がフリーズする。
耳から聞いた言葉の意味がうまく形を作らない。
愛してる? 誰が、誰を……?
「や、約束違反なのは重々承知だ。だが、こういうのは理屈ではないみたいで、自分ではどうにもならなかった。気がついたら好きになっていたんだ。いやこれは単なる言い訳だが……」
彬が慌てたようにあれこれ言う。それでも藍は反応できない。
まさか彼が自分のことを?
そんなこと……。
「あり得ない……」
思わずそう呟くと、彼は「うっ」とうめいた。
「そうだあり得ない。確かに、それはそうなんだが、……申し訳ない」
そして肩を落としてしゅんとしている。
慌てて藍は首を横に振った。
「あ、あり得ないってそういう意味じゃないです! 非難してるわけじゃなくて、そんな風に想ってもらえるなんて信じられないっていうか、夢みたいっていうか」