藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
藍の言葉に反応して、彬が顔を上げる。
伺うようなその視線は、いつもの自信満々な彼とはまったく違う。
藍の胸がキュンと跳ねた。きっとこれは誰にも見せない彼の顔。たまらなく好きだと心から思う。やっと彼の言葉の意味を理解する。
「私も、彬さんが好きです。好きになってしまっ……⁉︎」
言い終わらないうちに彼がさっと立ち上がり、藍はビクッと肩を揺らした。
隣に座り直した彼に、すぐそばで見つめられる。
「本当に……?」
「はい、だから父が嘘をついていたって知ったこと彬さんに言えなかったんです。言ったら、結婚の意味がなくなって彬さんが離婚するって言うかと思うと……。あ、つまり私離婚したくないです」
この際だから、思っていることを全部言う。するとふわりと抱きしめられた。
「俺もだ、信じられない、嬉しい、幸せ」
見たことがないような手放しの笑顔になって彼は言う。しかも彼らしくもなく、カタコトみたいな感じの言い方だ。それがかえって本心を表しているように思えて藍もつられて笑顔になった。
「私も、嬉しい、幸せ。信じられないです」
「うん、信じられないな」
その後、何度も何度もふたりで『嬉しい』『幸せ』『信じられない』を繰り返した。
彼はまるで宝物を見るような目で藍を見つめて頭をなでている。
「彬さん、実家に毎日来てもらってたのに会わなくてすみませんでした。風邪ひかなかったですか?」
いくら絶望してたとはいえ、誠実なやり方でなかった。
「もういいよ。確かにあの時は生きた心地がしなかったけど。こうして気持ちを受け入れてもらえたら苦労は全部吹き飛んだ」
「生きた心地が……ってそんなに、ですか?」
「ああ、はじめは気のせいかもと思ったんだが、確実になにか理由があって会ってもらえないんだとわかった時はもうどうしようかと思った。心あたりはないが、絶対に俺がなにかやらかしたんだと思ったから」
そんなことを考えていたのか。それなら尚更申し訳ない。それにしても。
「彬さんがなにかやらかすなんて、そんなことないでしょう」
完璧な彼がそんなことを考えるなんて思わず笑ってしまう。
すると彼はバツが悪そうに藍を見た。
「いや俺はそんな自信はどこにもない」
そこで藍の頭にある疑問が浮かぶ。
「父に連絡してみようとは思わなかったんですか?」
父は出張中だが、それは彼は知らない。
すると彼は空を見つめてから頷いた。
「言われてみればそうだな。そういう方法もあったのか。思いつかなかった。とにかく毎日通うくらいしか思いつかなくて……」
そんないきあたりばったりな手段しか思いつかなかったという彼にびっくりする。
彼が軽く藍を睨んだ。
「この通り俺は研究ひと筋だったから、人を愛すること自体がはじめてなんだ。勝手がわからない」
「で、でも……彬さんなのに」
『愛すること自体がはじめて』という言葉にドキドキしながら藍は答える。
こんな完璧な人でも、できないことがあるのだろうかと驚くが、思い返してみるとここのところの彬は今までと少し違っていた。
「俺は恋愛に関してはあまり得意ではないらしい……。幻滅か……?」
伺うようなその視線は、いつもの自信満々な彼とはまったく違う。
藍の胸がキュンと跳ねた。きっとこれは誰にも見せない彼の顔。たまらなく好きだと心から思う。やっと彼の言葉の意味を理解する。
「私も、彬さんが好きです。好きになってしまっ……⁉︎」
言い終わらないうちに彼がさっと立ち上がり、藍はビクッと肩を揺らした。
隣に座り直した彼に、すぐそばで見つめられる。
「本当に……?」
「はい、だから父が嘘をついていたって知ったこと彬さんに言えなかったんです。言ったら、結婚の意味がなくなって彬さんが離婚するって言うかと思うと……。あ、つまり私離婚したくないです」
この際だから、思っていることを全部言う。するとふわりと抱きしめられた。
「俺もだ、信じられない、嬉しい、幸せ」
見たことがないような手放しの笑顔になって彼は言う。しかも彼らしくもなく、カタコトみたいな感じの言い方だ。それがかえって本心を表しているように思えて藍もつられて笑顔になった。
「私も、嬉しい、幸せ。信じられないです」
「うん、信じられないな」
その後、何度も何度もふたりで『嬉しい』『幸せ』『信じられない』を繰り返した。
彼はまるで宝物を見るような目で藍を見つめて頭をなでている。
「彬さん、実家に毎日来てもらってたのに会わなくてすみませんでした。風邪ひかなかったですか?」
いくら絶望してたとはいえ、誠実なやり方でなかった。
「もういいよ。確かにあの時は生きた心地がしなかったけど。こうして気持ちを受け入れてもらえたら苦労は全部吹き飛んだ」
「生きた心地が……ってそんなに、ですか?」
「ああ、はじめは気のせいかもと思ったんだが、確実になにか理由があって会ってもらえないんだとわかった時はもうどうしようかと思った。心あたりはないが、絶対に俺がなにかやらかしたんだと思ったから」
そんなことを考えていたのか。それなら尚更申し訳ない。それにしても。
「彬さんがなにかやらかすなんて、そんなことないでしょう」
完璧な彼がそんなことを考えるなんて思わず笑ってしまう。
すると彼はバツが悪そうに藍を見た。
「いや俺はそんな自信はどこにもない」
そこで藍の頭にある疑問が浮かぶ。
「父に連絡してみようとは思わなかったんですか?」
父は出張中だが、それは彼は知らない。
すると彼は空を見つめてから頷いた。
「言われてみればそうだな。そういう方法もあったのか。思いつかなかった。とにかく毎日通うくらいしか思いつかなくて……」
そんないきあたりばったりな手段しか思いつかなかったという彼にびっくりする。
彼が軽く藍を睨んだ。
「この通り俺は研究ひと筋だったから、人を愛すること自体がはじめてなんだ。勝手がわからない」
「で、でも……彬さんなのに」
『愛すること自体がはじめて』という言葉にドキドキしながら藍は答える。
こんな完璧な人でも、できないことがあるのだろうかと驚くが、思い返してみるとここのところの彬は今までと少し違っていた。
「俺は恋愛に関してはあまり得意ではないらしい……。幻滅か……?」