藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
疾患を抱えている相手、しかも大きな手術を控えている藍と見合いをしてもいいなんてどんな理由なのだろうと思ったが、そういう立場の人なら納得だ。
了承せざるを得なかったのだろう。
所属先の大学が資金提供を受けている製薬会社の社長からの見合い話を断れるはずがない。
「最悪……」
「い、いや、無理は言っていないよ。……たぶん、きっと……」
「もー! やっぱり。そういう昭和みたいなことはやめてよね。迷惑じゃない。今すぐに断って。ちゃんと謝るんだよ」
「いやしかし、いい青年なんだよ」
「いい青年でもなんでも迷惑は迷惑だよ。私もそうだけど相手の方も絶対に乗り気じゃないし、会う意味ないよ」
「だけど藍は可愛いからきっと気に入られるし。どうしても一度だけ会ってほしいんだよ」
なにを根拠に……と呆れるが、これはいつものことだった。
何しろ父は藍が世界で一番可愛いと思っている。しかも恐ろしいことに、それが親フィルターがかかっている結果だといくら言っても信じてくれない。
とはいえ父がそこまで言うことに驚いてもいた。
自分も医師免許を持っていながら、今はビジネスの世界に身を置く父は、実はドクター嫌いなのだ。
大学病院勤務時代には、ネチネチとした人間関係に嫌気が差したと何度も口にしている。
そんな父がドクターを褒めるというのが珍しい。
「……そんなにいい人なの?」
見合いをする気はまったくないが人物像には興味が湧く。
「ああ、昔から知ってるんだ。天野の研究室にいた子なんだよ」
天野は父の学生時代からの友人で家族ぐるみでの付き合いがあった人物だ。数年前に亡くなったが、藍も親戚のように可愛がってもらった。
「彼は根っからの研究者だな。とにかく直向きに研究ばっかりしている。ちょっととっつきにくいところがあるが、嘘や言わなくてもいいことを言うことはないし、天野もいい研究者になると太鼓判を押していた」
なるほど、そういうタイプなら父が気に入るのは納得だ。
本人は口数が多いくせに、他人にはなぜか"口より行動"を求めるようで『人間はなにを言ったかではなくなにをしたかで評価する』というのが信念らしい。
了承せざるを得なかったのだろう。
所属先の大学が資金提供を受けている製薬会社の社長からの見合い話を断れるはずがない。
「最悪……」
「い、いや、無理は言っていないよ。……たぶん、きっと……」
「もー! やっぱり。そういう昭和みたいなことはやめてよね。迷惑じゃない。今すぐに断って。ちゃんと謝るんだよ」
「いやしかし、いい青年なんだよ」
「いい青年でもなんでも迷惑は迷惑だよ。私もそうだけど相手の方も絶対に乗り気じゃないし、会う意味ないよ」
「だけど藍は可愛いからきっと気に入られるし。どうしても一度だけ会ってほしいんだよ」
なにを根拠に……と呆れるが、これはいつものことだった。
何しろ父は藍が世界で一番可愛いと思っている。しかも恐ろしいことに、それが親フィルターがかかっている結果だといくら言っても信じてくれない。
とはいえ父がそこまで言うことに驚いてもいた。
自分も医師免許を持っていながら、今はビジネスの世界に身を置く父は、実はドクター嫌いなのだ。
大学病院勤務時代には、ネチネチとした人間関係に嫌気が差したと何度も口にしている。
そんな父がドクターを褒めるというのが珍しい。
「……そんなにいい人なの?」
見合いをする気はまったくないが人物像には興味が湧く。
「ああ、昔から知ってるんだ。天野の研究室にいた子なんだよ」
天野は父の学生時代からの友人で家族ぐるみでの付き合いがあった人物だ。数年前に亡くなったが、藍も親戚のように可愛がってもらった。
「彼は根っからの研究者だな。とにかく直向きに研究ばっかりしている。ちょっととっつきにくいところがあるが、嘘や言わなくてもいいことを言うことはないし、天野もいい研究者になると太鼓判を押していた」
なるほど、そういうタイプなら父が気に入るのは納得だ。
本人は口数が多いくせに、他人にはなぜか"口より行動"を求めるようで『人間はなにを言ったかではなくなにをしたかで評価する』というのが信念らしい。