藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 家は都内の閑静な住宅街にある一軒家で敷地も中も広い。藍の部屋は二階にありエレベーターも設置されているがなるべく階段を使うようにしていた。
 一歩一歩上りながら、改めて父のことを考えて、困ったな、と思っていた。
 身体の弱い娘のことが心配なのはわかる。父自身医者だから尚更なのだろう。
 昔からべたべたに甘やかされていて、藍のためならいくらかかっても願いをかなえようとしてくれる、そんな父だった。子供心に、気をつけないとこれでは自分はろくな大人にならないぞと心配になったくらいだ。
 さいわいにして、新田や学校での友人関係に恵まれて、それなりに常識というものは身につけたつもりだ。いわゆる金持ちのわがまま娘にはならなかったつもりだが……。
 ——まぁ、そもそも世間を知らないからそれもよくわからないんだけど。
 自室は続きになっているふた部屋だ。
 親友の陽菜には『王女かよ』と言われるがこれはただの贅沢ではない。
 在宅看護を受けていた時期にスタッフのために父が改装したのだ。
 先に風呂に入り寝支度を整えて、奥の部屋の寝室へ入る。十二畳とやや広いものの中は王女の部屋などではなくいたって普通のインテリア。ひとつだけ目を引くの壁一面に取り付けた作り付けの本棚だ。
< 18 / 141 >

この作品をシェア

pagetop