藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 手術を終えるまでは働くのは難しい。
 たくさん休まなくてはならないし、復帰できるかわからない状況で雇ってくれる場所は皆無だろう。
 だからといって手術後にも働けるまで体力が回復する保証はない……。
 そんな藍にとって、物語のヒロインたちがバリバリ仕事をしているのが羨ましくて仕方がない。
 その思いはこの春大学を卒業してからさらに強くなった。
 そんな中、親友に勧められたのがこのボランティアだ。内容はたくさんある書架の整理作業。
 休みは気にしなくていいというし、ノルマもない。
 無理をしなければ体力作りにはむしろいいと主治医からもお墨付きをもらった。
 でも父はそれを許してくれなかった。
 自他共に認める娘に甘々な父だが、藍ひとりでの外出など体力を使うことには鬼と言われるくらい厳しい。
 主治医から説得してもらったが許してもらえなかった。こっそりやることも考えたが、新田がいるので不可能だった。
 それでも諦めきれずに、こうしてチラシを眺めている。
 藍の周りはみんなしておかしいくらい過保護だ。
 仕方がないことは理解しているし感謝もしている。ただときどき、どうしようもなく息苦しくなる時がある……。
 物語の中ならヒーローが現れてヒロインを新しい世界へ連れ出してくれるけど、これは現実なのでそうはならない。
 だから今日もせめて物語の中で自由な世界を満喫しよう。
 気を取り直し、藍は再び本を開いた。
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