藤堂彬の誤算だらけの結婚生活

契約成立!

 このレストランでは通常アフタヌーンティーの場合、個室であっても部屋のすみにスタッフが待機していてサーブしてくれるが、今日はすべてのものを置いたら静かに部屋を出ていった。
 そうするように父が頼んだのだろう。
 カジュアルとはいえ、見合いなのだから、人目を気にせずゆっくり話せるようにという配慮である。
 本来の目的は叶えてあげられないのは申し訳ないが、謝罪をしようと考えている藍からしてもありがたいはからいだ。
 向かい合わせに座った男性が口を開いた。
「藤堂彬です。よろしくお願いします」
 そしてもうなにも言わずに黙っている。
 これ以上ないくらいの簡潔な自己紹介だ。
 その彼を前に、藍は目を丸くしていた。
 ——お父さんの言うとおりだった……!
 藤堂が恋愛小説の表紙みたいだというあの言葉だ。
 確かに彼は、カッコよかった。
 すっと通った鼻筋に大きくて切れ長の目、薄くて形のいい唇。ダークカラーのスーツをスッキリと着こなしている。
 親友の陽菜によるとスーツは男前度を二割増しにしてしまうらしいがそれを差し引いたとしても、圧巻のカッコよさだ。
 こんなにカッコいい人が、自分のような子供に毛が生えたような相手とお見合いをしているなんてと、もともと申し訳なく思っていたのが、さらに強い気持ちになった。
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