藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 彼ならきっと相手なんていくらでもいるだろう。浮いた噂がないのは慎重に相手を選んでいるだけなのかもしれない。
 ——それなのに、こんな見合いを捩じ込まれるなんて、迷惑だっただろうなあ。
 そんなことを考えていると「なにか?」と問いかけられる。
 はっとして首を横に振った。
「い、いえ。……すみません、ぼーっとしちゃって。私は、大須賀藍です」
 あわあわとして変な自己紹介になってしまう。
 彼はわずかに頷いた。
 そしてなにから話をするべきかと考えていると、彼が先に口を開いた。
「藍さん、会って早々、大変申し訳ないのですが、率直に話をしていいですか」
「はい」
 思いがけない言葉に緊張しながら頷いた。
「今日は、見合いという形をとっていますが私はあなたと結婚するつもりはありません。今日はお父さまからどうしてもと言われてここに来ました。それをまず知っておいていただきたい」
 突然の宣言に、藍は目をぱちぱちさせる。
 驚いた。
まさかこんなにはっきりと、しかも初っ端から宣言されるとは思わなかった。
 見合いを断れずに来たのだから優柔不断なタイプなのかと思ったが。
「……ええっと、父が無理を言ったんですよね。それはなんとなくわかっています。なので今日は私は謝罪をするつもりで来ました」
 話が爆速で進んでいることには驚きだが、それはそれでありがたい。
 そもそも藍は、気心の知れた友人や家族のような人たち以外の人と接する機会がほとんどない。どんなふうに立ち回ればいいかわからなかったのだ。
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