藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
「ちょっと度がすぎるんですよ。もちろんありがたいんですけど。でもこんなふうに周りに迷惑をかけるのは困ります。藤堂さんも困ったでしょう」
「いや、困ったというほどでもないよ」
「ならいいですけど。小さい頃からずっとそう。私の気持ちはお構いなしであれもこれも決めちゃうんんですよ。学校……はまあ、結果的にはよかったと思います。感謝もしていますけど、結婚までなんていくらなんでもやりすぎです」
 そこで藍は、しまったと思い口を閉じる。
 患者の気持ちを教えるなんて言ったくせに、これじゃただの愚痴だ。
「すみません……。ただの愚痴になっちゃってますね」
「いや、どのみちもうしばらくはここにいなくてはならないし、有益な答えは返せないが、吐き出してくれてかまわないよ」
 そう言って彼はコーヒーを飲む。
 つまりは暇つぶしというわけだが、藍の気持ちは軽くなった。
 共通の話題もないのに他の会話がはずむはずもない。彼とはもう二度と会わないのだからこの際、聞いてもらおうと思う。
「身体のことが第一なのはわかりますが、それじゃメンタルが持たないんですよ。あれもこれも制限されて、私にだって限度ってものがあります」
 聞いてもらえているのかどうかはもはやどっちでもよく、藍の口は止まらない。
「私の病状はここ二年は安定しています。それなのにまるで手術直前かのように扱うんです。外出だってろくにさせてくれないんですよ。主治医の先生から許可されたボランティア活動もダメだって言われて……!」
 拳を握りながら悔しがる。
「とにかく父の過干渉をどうにかしなくてはとは思っています。私だけならまだしも、周りに迷惑がかかりますから。今回の件でそう思いました」
 今入れている機器は、これまでで一番藍の身体に適合していて、人生で一番体調がいいのだ。
「もしかしたら、これが最期のチャンスかもしれないから、やりたかったこと全部したいのに。束縛と過干渉がひどすぎる……」
 頭を抱えてうめいていると、黙って聞いていた彼が口を開いた。
「ちなみになにをやってみたいんだ?」
 藍はぱっと顔を上げる。
< 32 / 141 >

この作品をシェア

pagetop