藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
そのくらいで自由が手に入るならむしろお釣りがくるくらいだ。
「そっか、結婚すればよかったんだ! すごいいいこと聞いちゃった……!」
目の前が開けたような心地がして、感動で胸がドキドキする。
「結婚すれば、お父さんとべつの場所に住めるもんね。どこへ行くのかいちいち報告をして、あれこれ言われなくて済むんだ。帰りが遅いとか、なにを食べたのかとか聞かれなくていいんだ」
「もちろん限度はある。君の場合、日常生活は問題ないが過度な運動や睡眠不足はダメだ。そのあたりは口出しさせてもらう」
「それはもちろんです」
だとしてもこれ以上ないくらいありがたい話だ。
べつに大冒険したいわけではない。当たり前の生活を満喫したいだけなのだから。
「あの、あの、あの……! 私ボランティアをしたいんです! 図書館の。主治医の先生はいいって言ってくれてるのに父が重たいものを持っちゃいけないとか、埃っぽいのはダメだとか言って許してくれなくて。それはやっても……?」
「念のため俺の方でも現場を見させてもらうが、主治医の許可があるならいいだろう」
もう藍は飛び上がらんばかりになる。
「ありがとうございます! ぜひぜひよろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げると「いや待て」と制された。
「デメリットはまだある。これは人によってはかなり重要だ」
「はい」
「会ってまだ少ししか話をしていないからわからないかもしれないが、俺はどうやら情緒、というものが欠如しているようだ。それについて周りから苦情がくることも珍しくない。無駄なことが嫌いなので、必要最低限の話しかしないし、お世辞も言わない、愛想笑いもしない。そういったところが一緒にいて怖い、あるいは苦痛だと感じる相手もいるようだ。というかほとんどの人間がそうらしい」
「はあ、なるほど」
会って少ししか経っていないからわからないだろうと彼は言うが、正直言って少しわかる。
「俺にとって一番大事なのは研究に集中できること。研究に必要ないことは無駄だとみなして最小限に留める生活を送っている。そういう相手と一緒にいることに君が耐えられるか、という問題だ。大抵の相手は十分もすれば嫌になる」
「そっか、結婚すればよかったんだ! すごいいいこと聞いちゃった……!」
目の前が開けたような心地がして、感動で胸がドキドキする。
「結婚すれば、お父さんとべつの場所に住めるもんね。どこへ行くのかいちいち報告をして、あれこれ言われなくて済むんだ。帰りが遅いとか、なにを食べたのかとか聞かれなくていいんだ」
「もちろん限度はある。君の場合、日常生活は問題ないが過度な運動や睡眠不足はダメだ。そのあたりは口出しさせてもらう」
「それはもちろんです」
だとしてもこれ以上ないくらいありがたい話だ。
べつに大冒険したいわけではない。当たり前の生活を満喫したいだけなのだから。
「あの、あの、あの……! 私ボランティアをしたいんです! 図書館の。主治医の先生はいいって言ってくれてるのに父が重たいものを持っちゃいけないとか、埃っぽいのはダメだとか言って許してくれなくて。それはやっても……?」
「念のため俺の方でも現場を見させてもらうが、主治医の許可があるならいいだろう」
もう藍は飛び上がらんばかりになる。
「ありがとうございます! ぜひぜひよろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げると「いや待て」と制された。
「デメリットはまだある。これは人によってはかなり重要だ」
「はい」
「会ってまだ少ししか話をしていないからわからないかもしれないが、俺はどうやら情緒、というものが欠如しているようだ。それについて周りから苦情がくることも珍しくない。無駄なことが嫌いなので、必要最低限の話しかしないし、お世辞も言わない、愛想笑いもしない。そういったところが一緒にいて怖い、あるいは苦痛だと感じる相手もいるようだ。というかほとんどの人間がそうらしい」
「はあ、なるほど」
会って少ししか経っていないからわからないだろうと彼は言うが、正直言って少しわかる。
「俺にとって一番大事なのは研究に集中できること。研究に必要ないことは無駄だとみなして最小限に留める生活を送っている。そういう相手と一緒にいることに君が耐えられるか、という問題だ。大抵の相手は十分もすれば嫌になる」